2018 Fiscal Year Annual Research Report
Sodium dynamics and transcriptome of salt tolerant species in the genus Vigna
Project/Area Number |
18H02182
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
内藤 健 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源センター, 主任研究員 (20581705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴井 伸郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員(定常) (20391287)
古川 純 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40451687)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Vigna属 / 耐塩性 / RIイメージング / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多様性高いVigna属野生種のうち、植物体内へのナトリウム吸収が極端に少ない V. marina、最上位完全展開要にのみ特異的にナトリウムを蓄積する V. luteola、そして根/茎にナトリウムを蓄積し、葉には蓄積させない V. nakashimae を材料として、耐塩性機構の解明とそれに関わる遺伝子の同定を目指す。 まず、V. marina の PETIS によるリアルタイムの RI イメージング解析により、最も耐塩性に優れた Vigna marina が日中にのみ根からナトリウムイオンを排出することが明らかとなった。他の耐塩性野生種ではこのような現象は観察されなかったことから、根からのナトリウム排出は V. marina が独自に獲得した機構であると考えられた。 V. luteola におけるナトリウムの挙動は GREI システムによって解析する予定だったが、ソフトウェア開発の進行が止まってしまったため、初年度は解析することができなかった。 また、葉にナトリウムを蓄積しない野生種 V. nakashimae のトランスクリプトーム解析を行った。以前の研究調査から、この種は塩ストレス条件下においてカリウムを積極的に吸収することでナトリウムの吸収を抑えていることが分かっている。本研究の結果、この機構にはナトリウムチャネルの一つであるNHX1が関わっていることが示唆された。この遺伝子は元々液胞内にナトリウムを隔離するために機能していると考えられてきたが、近年ではむしろ液胞でのカリウム貯蓄における役割の方が重要だとする報告もある。V. nakashimae の葉におけるカリウム蓄積・ナトリウム排除という特徴を考えれば、NHX1がカリウムの蓄積に関与している可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではPETISよりも視野が広いGREIシステムを用いて、より長期間にわたるリアルタイムイメージングを計画していたが、解析ソフトウェアの開発が止まってしまったために期間内にGREIシステムを使用できる可能性はかなり低くなった。 しかしPETISによる解析の結果、V. marinaの植物体内におけるナトリウムの挙動を捉えるにはこのシステムの時空間的な制約の範囲で十分であることがわかった。本研究ではV. marinaの植物体を放射性ナトリウムを含む水耕液で栽培した後、根を洗浄した上で放射性ナトリウムを含まない100 mM NaClの水耕液に移し、PETISによる解析を行った。その結果、V. marinaが日中にのみ根からナトリウムが排出するという、これまでに観察例のない全く新しい現象を捉えることができた。V. marinaの次に耐塩性が高いV. luteolaについてはPETISよりも広い視野と長時間の観察が必要と考えられるが、これについても近年開発されたシンチレーターを用いたイメージング手法によって解析できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は V. marina のトランスクリプトーム解析と、V. luteola のRIイメージング解析を中心に行う。 V. marina は根の基部から日中にのみナトリウム排出が起きることが明らかとなったため、100 mM NaCl または 0 mM NaCl を含む水耕液で植物体を栽培し、4時間ごとに48時間にわたって根端・根基部・葉の3箇所からサンプリングし、RNA-seq を行う。得られた結果から、根の基部において日中にのみ発現が上昇する遺伝子を同定する。また、比較対象として根からのナトリウム排出が見られない近縁種を用い、候補遺伝子のさらに絞り込むための対照とする。 V. luteolaについては、50 cm X 60 cm の巨大シンチレーターを用いた装置を使用し、長期間に渡って植物体内におけるナトリウムの挙動を明らかにする。また、今年度から次年度にかけて、節ごとに RNA-seq を行い、最上位完全展開葉への分岐点となっている節で特異的に発現する遺伝子を同定する。
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