2019 Fiscal Year Annual Research Report
Search for new genetic resources for direct seeding of rice and tolerance mechanisms of submergence and drought during the emergence stage
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18H02186
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 洋一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50463881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 浩二 近畿大学, 農学部, 准教授 (50580859)
石橋 勇志 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50611571)
佐々木 和浩 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 任期付研究員 (70513688)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
水ストレス環境に適応した耐性イネ品種およびイネ栽培技術の開発のため、干ばつ・洪水条件下の発芽・出芽に関する分子生理学・解剖学・遺伝学的機構の解析を進めた。フィールドでのイネ生理生態では深播き耐性に着目した解析を進めた。その結果、深播き耐性は乾燥条件下の直播イネの苗立ちに関係することが示唆され、それに関与する形質として中茎長と第1節間長の応答が示唆された。そして深播き耐性の高い品種では、耐性の低い品種に比べて乾燥下での最適播種深度が深いこと、つまり播種深度を深くすることで乾燥下でも出芽が安定することが示唆された。また、分子生理学・解剖学解析においては、前年度までに確立した室内実験(閉鎖系実験)の実験プロトコルを基に詳細な解析を進めた。浸透圧ストレス条件下における種子発芽において、Rc348は他のインディカ品種に比べ高い発芽率を示した。この品種の高い発芽率に関して、種子発芽関連遺伝子の発現解析を行った。さらに、イネ発芽において、種子の胚乳のデンプン分解に関係することからアリューロン細胞の形態に着目したが、その細胞形態観察手法については当初の想定よりも多くの困難に直面した。すなわち、アリューロン細胞の内側からデンプン粒が蓄積しているため、その細胞に差し掛かると、従来法では連続切片の作製が困難であった。細胞への樹脂の浸透が悪いことが考えられたため、樹脂の浸透時間を長くし、再度、固定を行った。そうしたところ、各品種において、500~800枚の連続切片を作製することに成功し、アリューロン細胞の連続画像を取得することができた。前年度までに既に確立したオルガネラの三次元像構築や接触面の定量に向けて、細胞の連続画像に関して(細胞内構造の)トレースを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績概要で記した通り、イネ種子のアリューロン細胞形態観察手法の確立において当初の想定よりも多くの困難に直面した。しかし手法上の問題はほぼ解決に至り、今後はスムーズな展開が期待できる。また、フィールドにおけるイネ出芽の生理生態について、播種深度条件を揃えることが現段階では難しく、引き続き追試を行って再現性を確認する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
乾燥条件下のイネ出芽の遺伝学的機構解明に向けて、乾燥条件におけるイネ出芽の品種間差異の再確認を進めるとともに、ストレス耐性品種×感受性品種のF2集団から戻し交配を進め、BC2F1まで世代を進める。今後も世代促進を進めて固定をはかり、多環境試験の準備を進めていく。細胞形態解析については、細胞構造のトレースが終わり次第、三次元画像を構築し、細胞の定量的・定性的評価を行っていく。浸透圧ストレス条件下の種子発芽関連遺伝子の発現解析では、ジベレリンの生合成に関与するGA20 oxidaseやGA3 oxidaseやアブシジン酸の代謝に関与するABA8’OHの発現の関与が示唆されており、種子内のジベレリン及びアブシジン酸に着目しながら解析を進める。
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