2019 Fiscal Year Annual Research Report
高速形質評価・環境計測によるダイズ安定多収化に貢献する群落生産形質遺伝子座の探索
Project/Area Number |
18H02190
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
熊谷 悦史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 主任研究員 (80583442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小木曽 映里 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 研究員 (00646929)
長谷川 利拡 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 調整監・技術支援センター長等 (10228455)
屋比久 貴之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 研究員 (20824270)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハイスループットフェノタイピング / リモートセンシング / 環境計測 / ダイズ / 遺伝解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、遠隔計測等による高速形質評価手法を構築し、それを日米ダイズ品種の交配後代に適用し、米国品種に由来する高い乾物生産性に関わる遺伝子領域を特定することである。本年度は、群落の可視・近赤外領域のハイパースペクトル反射率、太陽光誘導クロロフィル蛍光(SIF)および蒸発散量を計測する圃場可搬型システムを構築した。日米ダイズ9品種を対象に、定期的な地上部重の抜取調査と併せて上記の計測を実施し、計測値から地上部重の遺伝的変異や時系列変化を高速に捉えることができるかを検討した。 全調査日のハイパースペクトル反射率データを使い、地上部重を予測するのに最適な正規化分光植生指数(NDSI)を探索した。NDVIの式に従い、任意の2波長の反射率を選び、NDSIを総当たりで計算し、地上部重との決定係数(R2)が最も高くなる組み合わせを選定し、単回帰モデルを作成した。加えて、部分最小二乗回帰などの学習器を使用し、地上部重を目的変数、全波長域の反射率を説明変数とする多変量回帰モデルを作成した。近赤外領域の2波長を組み合わせたNDSIでR2が最も高くなった。いずれのモデルも、R2は0.8、相対誤差は20~25%程度で、高い予測力を示した。モデルにおける地上部重の予測値と実測値の関係を計測日毎にみると、R2が低い日があった。本課題では、同一生育ステージでの乾物生産力の遺伝的変異を捉える手法の構築を目指している。この点を改良するために、引き続きデータを収集する。 全調査日の地上部重、植被率(受光率)および日々の日射量から日射・乾物変換効率(RUE)を算出し、その期間に取得したSIF、光化学反射指数(PRI)、蒸発散量の平均値との回帰分析を行った。その結果、RUEとPRIとのR2は有意であったが、RUEとSIFや蒸発散量とのR2は低かった。SIFや蒸発散からのRUE推定は難しいと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、群落の可視・近赤外領域のハイパースペクトル反射率、SIFおよび蒸発散量を計測する圃場可搬型システムの構築が完了し、地上部形質の推定手法の構築も進んだので、おおむね順調に進展していると判断した。 ハイパースペクトル反射率と分光指数法や多変量回帰法によって、地上部重などの時系列変化を精度よく推定できることが分かったが、ステージ毎の品種間差の検出精度はあまり良くなかった。また、PRIからRUEを推定できる可能性は示されたが、SIFや蒸発散量からRUEを推定するのは難しいと判断された。ただし、これらの結果は、単年度で得たものであるので、年次反復を重ね、データを収集する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構東北農業研究センター(熊谷、長谷川、屋比久)では、昨年度に引き続き、日米ダイズ9品種を対象に、地上部重などの群落生産形質の時系列データを取得するとともに、構築した計測システムでハイパースペクトル反射率、分光植生指数、SIF、蒸発散量の時系列データも取得し、分光指数法や多変量回帰法による群落生産形質の予測モデルの再構築と検証を行う。また、日米ダイズ品種の4系交雑の組み換え近郊系を栽培し、開花期や成熟期などの基礎データを取得するとともに、一部の系統を対象に、群落のハイパースペクトル反射率と地上部重の時系列データを取得する。分光指数法や多変量回帰法による地上部重の推定モデルを構築する。全系統を対象に、ハイパースペクトル反射率を計測し、推定モデルに入力し、地上部重を推定する。 独立行政法人国立科学博物館分子生物多様性研究資料センター(小木曽)では、日米ダイズ品種の4系交雑の組み換え近郊系の中で、形質に分離が見られた系統について遺伝子型を判定し、次年度以降に使用する遺伝解析材料の養成を進める。
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