2019 Fiscal Year Annual Research Report
Characterization of long shelf-life and pulp disorder-alleviating mechanisms using late-harvest rare peach cultivars bred private growers as genetic resource
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18H02200
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中野 龍平 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70294444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牛島 幸一郎 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20379720)
福田 文夫 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (60294443)
高田 大輔 福島大学, 食農学類, 准教授 (80456178)
河井 崇 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (90721134)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 成熟 / 老化 / モモ / 軟化 / 自己触媒的エチレン先生 / エチレン応答 / 熟期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、棚持ち性の優れる品種、熟期と障害発生の異なる枝変わり系統に関して、以下のような成果が得られた。 1)桃水のエチレン応答性と低温応答性に関する研究:桃水ではプロピレン処理により、エチレン生合成が誘導されないが、軟化は誘導され、エチレン応答性の保持が確認された。10度と0度の低温への遭遇により、貯蔵中や常温移動後にエチレンが誘導され軟化した。低温によるエチレン生成と軟化の誘導技術として、流通期間の調整への利用可能性が示唆された。 2)大寿蜜桃のエチレン応答性の解析:大寿蜜桃、桃水、通常品種の川中島白桃にプロピレン処理を行い、継時的なサンプリングを実施した。RNA-seq解析を実施し、特異的な発現変動プロファイルが検出した。 ‘大寿蜜桃’において、葉の黄化や落葉発生へのエチレン応答性は正常であり、大寿蜜桃のエチレン応答性の欠損は果実軟化特異的であることが明らかとなった。 3)紅博桃およびその枝変わり系統の成熟特性と障害発生特性の調査:紅博桃の枝変わりの肥大特性の年次変動を調査したところ、肥大が緩慢となる生長第2期が枝変わりにて長いこと、また、生長第2期中の肥大がより緩慢なことが分かった。枝変わりと親株の各発育段階の果実のRNA-seq解析を実施した。 4)バイオインファオマティック解析:桃水のRe-seq解析より既知の硬肉モモと同様の変異が確認された。大寿蜜桃および冬美白のRe-seq解析より、両品種とも既知の硬肉モモのYUCCA11遺伝子プロモーター領域の変異やSRモモのNAC遺伝子の欠損変異はなかった。紅博桃とその枝変わりに関する詳細なRe-seq解析より、親株のヘテロ配列が枝変わりではホモ配列になる変異が発生している可能性が示された。親株と枝変わり果実のRNA-seq解析より、この領域内外に存在する遺伝子の発育に伴う発現変動のプロファイルを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
桃水が自己触媒的エチレン生成能を持たない硬肉モモ系であることが明らかとなるだけでなく、日本にて育成された品種同士の交配により高品質かつ棚持ち性の良い品種の育成が可能であることが実証され、今後の品種育成にとって重要な事象が示された。園芸学研究に掲載された。また、低温によって軟化が誘導されることが明らかとなり、今後、実用技術としての発展が期待される。 大寿蜜桃は自己触媒的エチレン生成能を持つが、エチレンよって軟化しないという特徴的な性質を持つことが明らかとなった。このような変異は果実研究のモデルであるトマトの変異体でも発見されておらず、大変、興味深い現象である。さらに、桃水および大寿蜜桃の比較により、自己触媒的エチレン生成および軟化をそれぞれ個別に制御するシグナル伝達系の解明が期待され、そのRNA-seqデータの解析が進んでいる。 紅博桃では同じ樹内の枝単位において熟期が大きく異なること、枝変わりにおいて障害発生が多いなど多面的な形質の違いが明らかになった。親株においてヘテロ配列が枝変わりではホモ配列になる変異が広い範囲で生じて可能性を示すデータが得られており、当初には予定していなかった、大変、興味深い変異であることが分かってきている。すでに、親株および枝変わりのRNA-seqからの遺伝子発現レベルのプロフィリングも完了しており、今後、熟期や障害発生に関連する遺伝子の探索に向けた準備が整っている。 さらに、大寿蜜桃と川中島白桃の交配後代や紅博桃とその枝変わりの接ぎ木個体や自殖後代といった、より詳細な遺伝解析の遂行に必要な材料の準備も進んでいる。これらより、本研究は計画以上に進捗している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの成果を基に、本年度からは桃水と大寿蜜桃の解析を同項目として、また、バイオインフォマティク解析を桃水と大寿蜜桃の比較解析や、紅博桃とその枝変わりの比較解析に組み込み、以下のような2項目の計画により研究を実施する。 1)桃水および大寿蜜桃のRNA-seq解析:桃水ではエチレン生成能を持たす、大寿蜜桃はエチレンに応答して軟化する能力を失っている。両者および正常な品種である川中島白桃に関して、RNA-seqデータが得られている。本年度は、RNA-seqにより遺伝子発現を網羅的に解析し、Re-seq解析結果と合わせ、自己触媒的エチレン生成とエチレン誘導軟化に関わるシグナル伝達系因子の探索や、数百の細胞壁分解関連遺伝子から、モモの軟化に関連する遺伝子群の特定を試みる。次年度以降の大寿蜜桃の表現型に関わるより詳細な遺伝解析を目的として、大寿蜜桃と川中島白桃の交配後代の育成を開始する。 2)紅博桃およびその枝変わり系統の成熟特性と障害発生特性の調査; 紅博桃の枝変わりでは、親株と比べ多面的な表現型の違いがあること。Re-seq解析の結果、広い領域で親株においてヘテロ配列が枝変わりではホモ配列になる変異が生じている可能性が示唆された。今年度は、この領域の特定と領域内の数千の遺伝子について、RNA-seqデータを利用したさらに詳細な発現解析や個々の遺伝子に関する配列異常などを調査する。さらに、今後の遺伝解析のために親株および枝変わりの自家受粉による後代の獲得を試みる。また、キメラ性の確認を目的として、接ぎ木による表現型の維持の調査や、果実由来DNAのRe-seq解析などを実施する。
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