2020 Fiscal Year Annual Research Report
CERK1共受容体を介する植物防御と共生応答機構の解明
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18H02208
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
賀来 華江 明治大学, 農学部, 専任教授 (70409499)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 植物免疫 / キチン / LysM受容体 / 防御応答 / 共生応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナを用いる簡便な防御応答解析の一つに活性酸素生成の測定があり、これまで、シードリングやリーフディスクを主に用いられているが、植物体の個体による差異、試薬の浸透性や応答性の違いから、その改善が必要であった。そこで、シロイヌナズナの野生型および各種変異体の種子を同一な操作からカルス誘導して作成した培養細胞株を用い実験を行た結果、遺伝的背景の異なる細胞株間での応答の比較が可能であることを示し、また樹立した培養細胞株が、薬理学的解析にも応用可能であることが示された。 植物細胞におけるキチン誘導性カロース蓄積のような局所的な防御応答機構の解明において、細胞膜あるいは内膜系オルガネラ及びカロース蓄積の可視化解析を進めている。FM色素FM4-64は、細胞膜に選択的な検出色素であり、汎用的に膜系オルガネラの構造や動態観察に用いられる。しかし、植物組織でカロースの染色用色素であるABFとFM4-64との二重染色では、FM4-64の蛍光がほとんど検出されず、生体組織中で細胞膜とカロースを同時に検出することができなかった。そこで、ABF存在下でFM4-64と分子構造の異なるFM色素FM1-43、FM2-10との二重標識について検討した結果、等モルのFM色素とABFを同時に処理した場合、FM1-43、FM2-10では細胞膜の検出が可能であったが、FM4-64ではABFによって細胞膜の検出が阻害されることが示され、それぞれのFM色素の構造的な差異が、膜や膜の周辺環境に異なる影響を与えることが明らかになった。 イネOsCERK1-CEBiP受容体複合体の形成機構の解析に、OsCERK1とLPKの二重欠損変異体に,複合体形成に関わる領域とアミノ酸残基を改変させたOsCERK1のイネ形質転換体の作出し、ホモ体の選抜が順調に進んでおり、防御や共生応答系に関わるかどうかについても解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
それぞれの課題の進捗状況に違いがあるが、課題における問題点をさまざまな工夫と新たな手法を加えて、全体的に少しずつ前進している。また本研究において、イネの目的分子の欠損形質転換体及びその形質転換体に新たな分子を導入する形質転換体の作成し、実験が可能になるまでが、もっとも莫大な時間を要するものであるが、現在、それらの形質転換体の作成が整いつつある。最終年度には、その解析が始まることが可能になり、その結果に期待したい。さらに、シロイヌナズナのキチン応答系の新たな解析手法を整備したことにより、今後の研究の展開にも大きく寄与すると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
イネリポ多糖(LPS)防御応答系に関わる受容体の実体の解明を目指すために、ビオチン標識LOSの作成に成功したが、LOSのビオチン導入した部位が、受容体の本体の結合に構造的な障害になるかどうかの確認を行うために、抗LipidA抗体との親和性標識実験を行った結果、ウエスタンブロテイングにおいて検出されたバンドが擬陽性なものであることが明らかになり、その原因が抗体の安定剤として混入されているBSAによるものであった。BSAが混入していない目的の市販抗体が見いだせず、そこで抗BSA抗体-アガロースを用いて、市販抗LipidA抗体に混在するBSAを吸着する。この精製抗体を用いて、ビオチン標識LOSとの結合実験を進め、ビオチン標識LOSのリガンドとしての適合性を調べる。その後イネ原形質膜画分との親和性標識実験を試みる。一方、新たなLPS受容体の探索系を立ち上げたいと考え、それにはまずよく研究が進んでいるCEBiPをモデル受容体として用いて検討を行う。その探索系の立ち上げが順調に進めば、イネゲノム中にあるCEBiP型分子を抽出し、さらに性質上の分類を行い、受容体としての可能性の高いものからLPS受容体としての可能性について調べる。LysM受容体複合体の形成と活性化機構の解明においては、解析に用いる形質転換体の作成が進んでおり、形質転換体の種子からカルスを誘導し、培養細胞系を立ち上げたのちに解析を進めることが可能になり、大いに結果に期待したいと考えている。また、LysM受容体を介する防御及び共生シグナル伝達の解明に関しては、CRISPR/Cas9を利用した複数のRLK欠損変異体の作成がすでに進められており、変異体の応答解析の結果に期待したい。
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