2018 Fiscal Year Annual Research Report
The impacts of artificial disturbances on wildlife ecology and physiology
Project/Area Number |
18H02218
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
揚妻 直樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60285690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MacIntosh Andrew 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (30623136)
木下 こづえ 京都大学, 野生動物研究センター, 助教 (50724233)
和田 崇之 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (70332450)
井上 英治 東邦大学, 理学部, 講師 (70527895)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 野生動物 / 人為的攪乱 / ストレス / 腸内細菌 / 寄生虫 / 非侵襲的手法 / 糞 / シカ |
Outline of Annual Research Achievements |
人間と野生動物の共存を実現するには、野生動物に対する人為的攪乱の実態を理解する必要がある。本研究の目的は、屋久島において生息地改変(農林業・道路交通など)や狩猟・駆除などの人為的攪乱が、野生のシカの体内(ストレス・寄生虫や腸内細菌感染など)および生態(生息密度・逃走距離・活動性など)に及ぼす影響を明らかにすることである。2018年度は、その準備期間に充てる予定となっていた。 そこで、まず人為的攪乱の大きい地域(攪乱地)と対照区となる攪乱の小さい地域(非攪乱地)の選定を行った。さらに、それらの地域で調査を行うための各種許可を行政各署に申請し、許可を取得した。 本研究ではシカから非侵襲的に得られる糞を用いてストレスホルモン、性ホルモン、腸内細菌叢、寄生虫、糞をしたシカの個体識別のためのDNAを分析することにしている。しかしながら、糞中のホルモン濃度や細菌叢は排泄後の経過時間とともに変化していくことが予測される。どのように変化するかを事前に把握しておく必要があった。そこで、非攪乱地においてシカを個体追跡し、排泄直後の糞を採集し、その糞を野外に放置して、時間経過とともにホルモン濃度や細菌叢の変化の様子を調べた。さらに、収集した糞の新鮮さを推定する手法も検討した。 また、試験的に各調査地に落ちている新鮮な糞の採集を行い、効率的な試料収集の手法を模索した。さらに各調査地におけるシカの生息密度・活動性などを調べるために、自動撮影カメラを設置した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
駆除圧が高く交通量も多いなど人為的攪乱の大きな地域(攪乱地)として屋久島北部と南西部の2か所の森林を選んだ。また、それらの間にあり、この数十年駆除圧がかかっておらず交通量も比較的少ないなど人為的攪乱の少ない対象区(非攪乱地)の森林を西部に設定した。2018年8月にそれら3地域に自動撮影カメラをそれぞれ16地点に設置し、画像の記録を開始した。2019年2月までの画像データを回収し、画像の解析を始めた。なお、現在も撮影は継続中である。 糞中のストレスホルモン濃度は排泄後の時間経過に伴い変化すると推測されるが、どのように変化するのかについてはニホンジカでは一切情報がなかった。そこで、非攪乱地においてシカを個体追跡し、排糞直後の糞を採取した上で、野外に放置して、ホルモン濃度(コルチゾールなど)の時間変化を計測した。その結果、排泄後10時間以内であればホルモン濃度は大きくは変化しないことが解った。また、糞の水分含量が50%程度であれば排泄後10時間以内である可能性が高いことも示された。同様の経過実験を細菌叢についても実施したところ、細菌叢については排泄後3日間経過しても、構成に大きな差がないことが解った。そこで、細菌叢について糞の水分含量が30%程度(24時間経過相当)以上の糞であれば分析に使えることが解った。なお、糞をしたシカの個体識別のためのDNA(マイクロサテライトDNA)分析については、申請者らの先行研究により3日間経過した糞でも分析できることが解っている。従って、ホルモン用の試料としては水分量50%以上、細菌叢・寄生虫・DNA用の試料としては水分量30%以上の糞を使用することを目安にした。 試験的に各調査地で落ちている新鮮な糞の収集を2018年11月から開始した。現在まで20試料程度集まっている。なお、研究期間内に各調査地で30個体以上の糞の収集を目標にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、新鮮な糞を収集するため、各調査地で数10m2のプロットを数カ所設置して、毎日、見回りをして新規に排泄された糞を採集するようにしていた(ほぼ24時間以内に排泄されたと考えられる)。しかし、この方法では3地域あわせて1日、平均1個未満の糞しか採集することができなかった。そこで、2019年度からは調査地内を歩き回り、新鮮な糞を見つけて収集する方法を主に行うことを検討している。収集した糞については水分量を計測し、各分析項目に適した鮮度の糞を使用することにする。これにより試料の収集効率を格段に向上できると期待している。 なお、糞の新鮮さを推測する糞中の水分量については、季節的変化もあることが解ってきた。2019年2月から3月の調査では、排泄直後であっても50%に満たない糞をしている個体もいた。従って、糞中の水分量に関する分析は継続し、より正確な排泄後の経過時間の予測を立てられるようにする予定である。
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Research Products
(1 results)