2020 Fiscal Year Annual Research Report
耳石安定同位体比を利用したニホンウナギの天然加入個体/放流個体の分布状況の解明
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18H02225
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
海部 健三 中央大学, 法学部, 准教授 (30615258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70463908)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ニホンウナギ / 耳石 / 安定同位体比 / 放流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナウィルス感染拡大防止の観点より、東京から試料採集のためにフィールドへ出ることが叶わなかった。また、多くの飲食店が営業を自粛または営業時間を短縮した影響から、試料採集をお願いしていた天然ウナギ漁業者の一部が休漁した。これらの影響により、予定していた試料採集が行えなかったため手元にある耳石試料、及び協力関係にある研究者が所有している耳石試料を用い、ニホンウナギ全長と耳石径との関係を整理した。本研究課題では、試料の一部として漁業者が販売目的で漁獲したニホンウナギを購入しているが、漁業者には得意先にウナギを卸すために胴体部分の提供に応じてもらえない場合がある。その場合は頭部のみを買い取るが、頭部のみでは全長の情報が得られないという問題があった。ニホンウナギ約1250個体分の左右の耳石の短径と長径を計測し、全長との相関を求めた。耳石径は短径に左右差があり、右側の耳石が有意に大きかった。全長との相関をANCOVAを用いて比較すると、左右の耳石で傾きに有意差はなく、左右どちらの耳石を用いてもニホンウナギの全長を推測できることが判明した。全長の推測には長径を用いた方が精度が高くなる可能性が示されているが、現在計測中の1400個体分のデータを加えて、今年度再検討する。 全長と耳石径の相関が整理されることにより、頭部や耳石のみが入手された際に耳石から全長を推測することが可能になるほか、耳石年輪に基づいて過去の成長履歴を推測するバックカリキュレーションの検証が可能となる。試料として頭部のみまたは耳石のみが手に入る場合としては、漁業者や飲食店から試料を購入した場合や、貝塚遺跡などからウナギの遺骨を収集して分析する場合が想定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度中に試料採集を終える予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大防止の観点より、東京から試料採集のためにフィールドへ出ることができず、また、多くの飲食店が営業を自粛または営業時間を短縮した影響から、試料採集をお願いしていた天然ウナギ漁業者の一部が休漁した。これらの影響により、予定していた試料採集が行えなかった。しかしながら、新しい耳石試料が入手できなかったことにより、日本・台湾のウナギ研究者から耳石試料の提供を受け、本研究課題の懸案でもあった、ニホンウナギの全長と耳石径の関係を整理することが可能となったため、当初計画よりもより進展したと解釈することもできる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は最終年度となるため、これまで得られたデータの解析を進める。全国12水系から試料を収集する計画であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により試料収集が進められなかったため、得られたデータは8水系に止まっている。2021年度は、新しい試料のみならず、他研究者の公開したデータも含めて可能な限りの耳石酸素炭素安定同位体比データを収集する。得られたデータは本研究課題の中で改善されたニホンウナギの天然加入個体/放流個体の判別モデルを利用して、天然加入または放流に判別する。天然加入個体/放流個体の判別確率は、一般化線形混合モデルを用いてウナギが捕獲された水域の環境(放流量、川と海の接続性など)と比較し、放流個体の優占する水域、天然個体の優占する水域の特徴を検討する。あわせて、学会発表及び学術論文の執筆を進める。
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