2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Information Base on Microbiota of Japanese Forests
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18H02233
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯部 一夫 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30621833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大手 信人 京都大学, 情報学研究科, 教授 (10233199)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 土壌微生物 / 森林 / 生物地理 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本全国40カ所の森林土壌に生息する微生物群集の地理分布を規定する因子を明らかにすることを目的に、それぞれの森林に生息する微生物群集の進化系統とそこの土壌環境の関係性について検証を行なった。具体的には日本全国スケールにおいて気候・植生・土壌環境が地理的に変化した際に、微生物群集の中でどのような微生物が優占するのかは微生物の進化系統にある程度依存するという仮説について検証した。 まず、日本全国の森林のうち少なくとも4カ所以上の土壌で優占する微生物を選抜して系統樹を作製した。続いて、前年度に微生物群集の種組成の地理分布を大きく決定しうる環境因子を特定しているため、選抜された微生物群の存在量と特定された環境因子との間の相関を計算し、系統樹上にマッピングし、微生物群の進化系統と得られた相関との関係性について解析した。 その結果、微生物の進化系統と、微生物群の存在量と土壌酸性度・土壌の炭素窒素比・年平均気温の相関との間に有意な関係を見出した。すなわち、例えば土壌の酸性度が中性から酸性に地理的に変化すると、進化系統的にランダムな微生物種が優占する(希少化する)のではなく、特定の進化系統のクレードに属する微生物群が揃って優占する(希少化する)ことが明らかになった。 このことは上に挙げた環境因子の変化に対して応答するような形質の有無が進化系統的に保存されていること、さらには特定の環境因子の変化に対して優占する(希少化する)微生物種を進化系統情報から予測できることを示唆している。 ただし、真菌類の解析に利用したITS領域遺伝子は微生物種による配列長の違いが大きいことから作成した系統樹の精度が低いことも明らかになった。そこで次年度ではITS領域遺伝子と18S rRNA遺伝子の全域の塩基配列解読を行い、より正確な解析を実施することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微生物の進化系統と、微生物群の存在量と土壌酸性度・土壌の炭素窒素比・年平均気温の相関との間に有意な関係を見出し、例えば環境因子の地理的な変化に対して、優占する(希少化する)特定の進化系統のクレードを特定することができた。より正確な解析を実施する必要が生じたものの、ほぼ計画通りに進行している。よって、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでで微生物の生物地理分布と土壌環境との間に有意な関係性が見出されたことから、さらにこの関係性が生態系機能、特に窒素循環にどのように反映されるのかを問う。同時に、今後のさらなる解析(日本の森林の微生物相に関する情報基盤の構築)に向けてのデータの取得を行い、必要となるインフォマティクスの開発に着手する。
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