2018 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of primary attractants for Platypus quercivorus and their application to the control of Japanese oak wilt
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18H02240
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 理正 京都大学, 農学研究科, 助教 (80263135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 正恵 (石原正恵) 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (90594367)
森 直樹 京都大学, 農学研究科, 教授 (30293913)
池野 英利 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (80176114)
岡田 龍一 神戸大学, 理学研究科, 学術研究員 (20423006)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カシノナガキクイムシ / 飛翔生態 / 穿孔行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫の飛翔を室内でシミュレートするフライトミルを用いて、カシノナガキクイムシの飛翔特性に雌雄で差が見られるかどうかを調べた。その結果、平均飛翔速度は雌雄ともに約4km/hであること、雌の場合は初期の飛翔速度が高まると最終的な飛翔距離が長くなる傾向が認められ、雌は雄に比べて飛翔にエネルギーを投資することで飛翔距離を稼いでいることが示唆された。 角度と幅を変えた21パターンの溝を施したホワイトオークの材をプラスチック容器に入れ、それぞれに対してフライトミルで飛翔させた後の雄成虫を1個体ずつ放って30分間観察し、溝を認識するかどうか、溝にとどまるかどうか、溝に穿孔するかどうかを調べた。その結果、主に溝の角度が穿孔活動に影響を及ぼし、角度が小さいほど溝にとどまる確率も穿孔する確率も高いことが分かった。 冷温帯の天然林で発生したナラ枯れが森林の長期動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、京都府北東部に設置した16haのプロットで、1992年より5年毎に25年間、胸高直径10cm以上の樹木のべ10580個体を対象に毎木調査を継続し、5年間の成長・更新・枯死に関して5期分のデータを得た。ミズナラを含む優占樹種について、胸高断面積合計・更新率・枯死率の変化を確認し、ナラ枯れの発生が周辺木の成長に及ぼす影響を調べた。1993~1997年を1期,1998~2002年を2期,2003~2007年を3期,2008~2012年を4期、2013~2017年を5期とすると、ミズナラはナラ枯れ発生期の3期と4期に枯死率が更新率を大きく上回り胸高断面積合計が激減したが、被害収束後の5期には増加した。スギとブナではナラ枯れ発生プロットにおける当該時期の直径成長量の増加が認められ、被害木の枯死でできたギャップにより短期的に周辺木の成長が増加したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では【1】カシノナガキクイムシが寄主木の探索に利用している物質の特定、【2】樹幹表面凹凸がカシノナガキクイムシの穿孔に及ぼす影響の解明 、【3】寄主木ミズナラの樹冠拡張モデルに基づくナラ枯れ被害発生予測、という3つの目的を設定している。【1】についてはこれまでに葉を用いた選択試験を行っており、これを応用して苗木を用いた選択試験の実験系構築が終わった。【2】は本研究で新規に始め、実験系の構築に難航が予想されたが、材に様々な角度を付ける工程とカシノナガキクイムシに実験室内で穿孔させる方法が両方とも確立でき、結果を出すことができた。【3】についてはフィールド調査は天候に左右されるので計画通りには進まないことが多いが、無事に長期森林動態調査を終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
カシノナガキクイムシの利用頻度が高い寄主(ミズナラ・コナラ)、利用頻度が低い寄主(ウラジロガシ・クリ)、非寄主(ブナ・スギ)の苗木を準備し、樹冠からの揮発性物質を捕集して、オルファクトメーターでカシノナガキクイムシに選択させる。結果を樹種間で比較し、カシノナガキクイムシがこれらの樹種をその揮発性物質で識別できるかどうかを確認する。捕集した揮発性物質はGCMSで分析し、一次誘引物質の候補を探索する。 今年度の実験により、カシノナガキクイムシが角度が小さい溝を認識して穿孔することが分かった。羽化脱出直後にこのような反応をすると古い寄主木に穿孔することになり、適応的ではない。また、穿孔前に揮発性物質などにより寄主を識別しているのであれば、樹幹に着地後は樹種に関わらず溝があれば穿孔しているのかもしれない。これらを明らかにするため、飛翔の前後で溝に対する反応に差がみられるのか、樹種に関わらず溝に反応して穿孔するのかどうかを検証する。 レジストグラフを用いて寄主木ミズナラの年輪解析を行い、長期動態調査のデータと照らし合わせて解析し、直径成長モデルを構築する。
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