2019 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of primary attractants for Platypus quercivorus and their application to the control of Japanese oak wilt
Project/Area Number |
18H02240
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 理正 京都大学, 農学研究科, 助教 (80263135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 正恵 (石原正恵) 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (90594367)
森 直樹 京都大学, 農学研究科, 教授 (30293913)
池野 英利 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (80176114)
岡田 龍一 神戸大学, 理学研究科, 学術研究員 (20423006)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カシノナガキクイムシ / ナラ枯れ / 寄主選択 / 穿孔行動 / 森林動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
カシノナガキクイムシが樹木の樹冠からの揮発性物質を検出し、寄主と非寄主を識別しているという仮説を検証するため、Y字管による選択試験を行った。寄主(ミズナラ・コナラ・ウラジロガシ・クリ)と非寄主(ブナ・スギ)の苗木を用いて試験したところ、カシノナガキクイムシは寄主の樹冠からの揮発性物質には誘引され、非寄主の樹冠からの揮発性物質は忌避することが示され、仮説が支持された。GCMSによる分析で、非寄主のうちスギは寄主と揮発性物質の組成が異なることが明らかになったが、非寄主であるブナの組成は寄主と明らかな差が認められず、カシノナガキクイムシが寄主特定に利用している物質はGCMSでは検出できていないことが示唆された。 樹幹上の溝がカシノナガキクイムシの穿孔行動に及ぼす影響を調べるため、角度を変えた6パターンの溝を施したホワイトオーク(寄主と同属)とスギ(非寄主)の材を容器に入れ、フライトミルによる飛翔前後のオス成虫計240個体を1個体ずつ放ち、穿孔行動を比較した。その結果、溝の角度が急な方が、また飛翔後の方が穿孔行動の確率が高まり、樹種間では差がないことが分かった。カシノナガキクイムシは、急な角度の溝がある樹幹に着地した後は、樹種に関係なく穿孔を開始することが示唆された。 1980年より3年毎の毎木調査を継続している京都府北東部の二次林で、39年目14回目の調査を行った。調査地では2008年よりナラ枯れが発生し、2018年には台風21号の影響で多くの倒木が発生した。各調査年の各樹種の胸高断面積合計をプロット単位で集計し、非計量多次元尺度構成法を利用して種構成の変化を序列化した。推定された1軸、2軸の座標変化を1984~1995年(1期)、1996~2007年(2期)、2008~2019年(3期)に分けて比較したところ、谷部での台風の影響と尾根部でのナラ枯れの影響が明確に示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目的として掲げている「カシノナガキクイムシが寄主木の探索に利用している物質の特定」については、寄主と非寄主の苗木を用いた選択試験とGCMSによる揮発性物質の分析を行い、誘引物質については候補が見つからなかったものの、忌避物質についてはいくつかの候補を挙げることができた。「樹幹表面凹凸がカシノナガキクイムシの穿孔に及ぼす影響の解明」については、飛翔後に穿孔行動が活性化すること、溝の角度が穿孔行動に影響を及ぼすこと、材の種類は影響を及ぼさないことが室内実験によって明瞭に示された。カシノナガキクイムシが適度な角度の溝があれば材の種類に関わらず穿孔することの発見は、野外で寄主樹種近辺の非寄主でも穿孔が見られることを説明できる結果であるとともに防除資材の開発にもつながる知見で、基礎生態学的にも応用的にも重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
フライトミルを用いたこれまでの研究で、カシノナガキクイムシの飛翔距離には大きなばらつきがあることが示された。この要因を明らかにし、防除につながる知見を得る。具体的には温度や湿度などの環境要因、性別や体重など生物的要因を検討する。 今年度の実験により、カシノナガキクイムシは溝さえあれば樹種に関わらず穿孔することが示唆された。実際に野外でも非寄主への穿孔が確認されているが頻度は低いので、穿孔の前の段階で非寄主を識別している可能性がある。これを明らかにするために、ナラ枯れ被害地で寄主樹種と非寄主樹種に粘着トラップを設置し、どのような条件下で非寄主への着地や穿孔が起こっているのかを調査する。
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