2019 Fiscal Year Annual Research Report
情報科学と画像解析を応用した新技術展開による養殖魚成育生産管理システムの開発
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18H02260
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高木 力 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (80319657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 孝司 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90367441)
鳥澤 眞介 近畿大学, 農学部, 講師 (80399097)
竹原 幸生 近畿大学, 理工学部, 教授 (50216933)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 養殖魚 / 生産管理 / 画像解析 / 情報科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類養殖では生産物が水中にあるため,生産管理や成育状況をモニタリングすることが農業と比べて困難となっている。そのため生産の効率化やきめ細かい養殖生産管理のためにはICT導入による養殖技術の高度化が求められている。本研究では魚類養殖の成育・生産を効率化するシステムの構築を目指して,非接触で養殖魚の収用個体数や生育状態を計測する基盤技術開発に取り組む。 【個体数計数システムの開発】養殖クロマグロを対象として大型生簀で養成される本種遊泳魚群全景を撮影するカメラシステムを構築し,撮影画像から個体画像抽出を行った。SegNetとよばれる遊泳個体画像をラベリングするための深層学習アルゴリズムを適用し,個体画像抽出を行ったところ,層構造の違いによって個体画像抽出の性能に大きな変化がみられ5層構造で最も抽出能力が高いことがわかった。また,生簀内照度の違いによる個体抽出能力に大きな差異は認められず,抽出アルゴリズムの堅牢性が確認された。個体画像抽出能力力向上のため,さらに対象画像の学習を強化する。 【行動計測による養殖魚状態評価技術開発】個体計数アルゴリズムでは取得された抽出個体画像にKC法を適用することにより,連続する画像間での個体移動をベクトル算出により推定した。従来の個体画像抽出法では画像ノイズの影響により移動ベクトル算定を誤ることが散見されたが,前述の深層学習を適用することにより改善された。連続する移動ベクトルから養殖魚群状態を評価できる指標として,移動ベクトルのノルム比が給餌前後で変化することが示され,当該指標を用いた状態評価の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 【個体数計数システムの開発】個体計数システムの開発では,魚群内の個体画像を抽出する画像処理部と取得された個体画像の移動ベクトルを推定するベクトル算出部の2つのパートで構成されている。画像処理部では画像内の個体のみを抽出するラベリング用の深層学習手法”Segnet”の適用が従来法よりも高度に画像抽出を実現できたこと,さらに当該個体抽出環境に適切なSegnet層構造を見いだすことができた。様々な環境下での養殖魚群画像を学習させることにより,画像処理部の個体画像抽出能力を今後高める目途が立ったものと考えられた。低照度環境下においても生簀環境下の個体画像抽出は可能であり,晴天時の高照度によるハレーション画像よりも個体画像抽出能力が高まることが示唆され,適正な撮影環境を提示することができた。こうした状況から,個体数計数システム開発は概ね順調に進捗しているといえる。 【行動計測による養殖魚状態評価技術開発】自由遊泳する養殖魚魚群の個体画像抽出能力ががSegnetを適用することにより従来法よりも高まったことで,個体の移動ベクトル算出量が増加し,養殖魚状態評価に用いる情報量を増加させることができた。連続する画像間で抽出された同一個体から推定される移動ベクトルの本数が増加したことにより魚群全体の大局的な状況をより把握しやすくなった。特に個体移動ベクトルの大きさの増減を用いて養殖魚全体の状態の違いを評価できる可能性が示唆された。また個体の移動ベクトル情報から移動ベクトル偏角等いくつかの行動特性を表現する指標を見いだせる可能性が示された。養殖魚の状態を定量的に評価できるか今後さらに実海域実験を進めて検証を行なえる状況であり,当該開発項目も概ね順調に進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
養殖魚個体数を計数するための実験フィールドとしてクロマグロ養殖場が選定され,構築されたカメラセットを用いて昼間,薄暮時など異なる環境下での撮影実験が行われた。今後は外海水の差し込み,照度や濁度が養殖魚の状態にどのような影響を及ぼすのか等,養殖環境が養成魚群に与える影響について評価するために,魚群構成個体から算出される移動ベクトルを応用した指標で定量評価できるか試みる。また,給餌前後で飢餓や飽食の状態の程度を,算出された移動ベクトルを適用することにより,移動ベクトルのノルム比の他に新たな指標を用いて評価できるか継続して解析を行う。 深層学習を適用した,個体画像抽出は従来法に比べて堅牢性が高いことがわかった。特にSegnetの層構造や,学習に必要なパラメータとなる反復回数,エポック数については適切な値が判明してきている。引き続きこれらのパラメータ設定が適当か検証を進めていく。また併せて,新たに深化した深層学習手法が解析ツールの候補対象となるようであれば,この適用性についても検討する。深層学習用の教師画像データをさらに増やし学習強化を図ることにより個体画像検出能力を向上させる。 抽出された個体画像からKC法により各個体の移動ベクトルを推定する手法は,画像上の個体重複時にベクトル検出力が低下するケースがある。こうした脆弱性を改善するため既存のKC法アルゴリズムを見直し改良する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Examination of image extraction method for fish individuals in aquaculture net cage2019
Author(s)
Abe, S., Takagi, T., Torisawa, S., Habe, H., Abe, K., Iguchi, N., Takehara, K., Masuma, S., Yagi, H., Nakai, S., Yamaguchi, T., And Asaumi, S.
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Journal Title
Contributions on the Theory of Fishing Gears and Related Marine Systems
Volume: 11
Pages: 119-127
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