2019 Fiscal Year Annual Research Report
底質改善と施肥の相乗効果によるアサリ成長促進と干潟の物質循環解析
Project/Area Number |
18H02265
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山本 民次 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (40240105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 光代 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20512718)
小野寺 真一 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (50304366)
陸田 秀実 広島大学, 工学研究科, 准教授 (80273126)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アサリ / 干潟 / 肥料 / 数値モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に続き、尾道市浦崎干潟にて、施肥によるアサリ成長試験を行った。主要な調査は、4、5,6月の3回行い、物理・化学的環境項目、アサリおよびその他生物に関する生物項目について、さまざま測定した。 測器類を用いたパラメータはすべて良好に取得できた。水温、塩分、光量子量など、干潟での一次生産を見積もるのに必要なデータは欠測なく取得できた。また、潮位を示す圧力データ、直上水中のクロロフィル・濁度データ、底泥直上および底泥内の溶存酸素濃度、なども非常にきれいな連続記録が得られた。 アサリの生残・個体成長は、固形肥料を30平米当たり10個の試験区1で最も良かった。30平米当たり20個設置した試験区2では、底泥が還元的となり、硫化水素臭がするなど、アサリの生存には逆効果であることが分かった。 干潟では、陸から浸透してくる地下水の浸出があることが、調査により定量的に分かってきたが、潮の干満による干潟砂面での海水の透過のほうが、当干潟の物質収支においては大きいことが推察された。 上記の各種環境変動条件を導入した数値モデルを作成し、窒素、リンの循環とアサリの成長について、ほぼ現場の状況を再現できるところまで来た。今年度は、3次元流動を入れたモデルと、化学・生物過程を中心とした物質循環モデルの2タイプを作成した。 これらのうち、後者のモデルでは流動系を干満の水位から海水交換として導入するための工夫として、潮位データの平均との時間ごとの偏差を用いて、海水の流入・流出の項をモデルに導入した。また、底泥中のFe, P, S, Mn, Oの酸化還元反応系のモデル化を行うことにより、干潟での物質循環を十分に再現できた。一方、前者のモデルは今後、後者のモデルに使っている生物・化学過程を取り入れることで再現性を高める計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現場試験・調査を4、5、6月に実施した。また、地下水-海水相互作用について、ピエゾメ ーター、CTDセンサーなどでの観測、ラドン濃度の測定を行った。 干潟底泥中の酸化還元過程のモデル化および砂泥内での地下水・海水の流動のモデル化を行った。 施肥成分がアサリにどれくらい回るのかを見積もることができた。また,モデルを用いて感度解析を行い、適正施肥量を算定した。ただし、施肥のコストとアサリ増産についての費用対効果の算定は十分にできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルスの発生による緊急事態宣言の影響で、報告会を設けることができなかったため、緊急事態宣言解除後、できるだけ早い時期に会議を設け、情報共有を行う予定である。 とくに、情報交換が必要な点としては、地下水流動の実態に関する定量的情報、3次元流動モデルへの生物・化学過程の導入部分の検討、固形施肥材の最適設置個数とアサリ漁獲とを比較することでのコスト面での試算、などである。 これらの成果については、国際学会での発表を予定しているが、今年度の後半に期待される国際学会がどれくらい開催されるのかが、現時点では不透明な状況である。国内で開催される学会での発表もいくつか予定している。
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