2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ecological role of ayu, common herbivorous fish, within a riverine biological community
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18H02267
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
井口 恵一朗 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (00371865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 信一郎 茨城大学, 教育学部, 教授 (40371869)
竹門 康弘 京都大学, 防災研究所, 准教授 (50222104)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 河川生態系 / アユ / 淡水魚類相 / 付着藻類 / 水生昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「どうして日本の河川には多様な魚類が暮らしていけるのか?」という問いかけに対して、河川の一次生産物である付着藻類を専ら食べるアユに着目して、日本の河川生態系における本種の役割を明らかにすることを目的としている。初年度は、魚類を含む生物相の異なる2つの河川(京都市内を流れる鴨川、奄美大島を流れる役勝川ほか)をフィールドとして、調査を実施した。 鴨川では、アユの個体数密度の増加(上流、中流および下流の調査地点でそれぞれ0.004、0.15、0.68個体m-2)に伴い付着藻類群落の現存量が減少した(3.8、1.7、1.4 g m-2)。一方、役勝川では、リュウキュウアユの個体数密度(上流、中流および下流の調査地点でそれぞれ0.02,0.15および4.8個体m-2)に関わらず、付着藻類群落の現存量に差は認められなかった(3.5、4.1、4.5 g m-2)。本川では、藻食魚の強い採食圧下で繁茂する糸状ラン藻(Tapinothrix janthina)が群落の7~8割を占めており(鴨川では2~4割)、リュウキュウアユが川にまだ遡上していない3月でも5~8割を占めていた。役勝川の付着藻類群落は、鴨川に比べて藻食魚の強い採食圧を恒常的に受けているものと考えられた。また、藻食魚の採食圧が強い河川では、アユの採食活動も異なる可能性が考えられた。 鴨川における潜水目視観察の結果から、アユの生息密度と他魚種の出現種数ならびに多様度指数の間には、正の相関関係が認められた。奄美大島においても、リュウキュウアユの生息密度と他魚種の出現種数ならびに多様度指数の間に正の相関関係が検出された。アユの存在が、その特異な摂餌行動を通じて、他魚種の餌料環境に影響を及ぼしている可能性が支持された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境条件の異なる2つのフィールド(鴨川および役勝川など)における調査を実施した。調査項目として取り上げていた付着藻類、水生昆虫、淡水魚類に関するデータならびにサンプルの取得は完了している。そのうち、付着藻類と淡水魚類について、一通りの分析を終えて結果を得ている。一方、水生昆虫に関連する安定同位体分析については、当初の方針通り、2年次以降に実施の予定である。以上により、おおむね順調に進展していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
2年次は、収集したサンプルをもとに安定同位体分析にも着手する。並行して実施を予定しているフィールド調査では、初年度同様の調査項目に加えて、藻食魚の採食圧が異なる鴨川と役勝川において、流下藻類の種類組成を比較するとともに、アユの採食活動の違いが付着藻類の群落構造に及ぼす影響を調査する予定である。
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