2019 Fiscal Year Annual Research Report
植物のバイオマス分配に及ぼす物理環境の複合影響の解明とフェノミクス研究への応用
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18H02307
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
渋谷 俊夫 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50316014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 良輔 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (10409146)
大山 克己 大阪府立大学, 研究推進機構, 特認准教授 (20456081)
植山 雅仁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (60508373)
地子 智浩 一般財団法人電力中央研究所, エネルギーイノベーション創発センター, 主任研究員 (60816479)
三柴 啓一郎 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (70390888)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 成長解析 / モデル化 / ファイトトロン / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
グロースチャンバーとフィールドにおいて植物の環境応答の違いをもたらす要因として,人工光源と太陽光における遠赤色光の割合の違いに注目し,植物成長に対するストレスとの複合影響を調べた.LED光源を用いて,遠赤色光と塩分がキュウリ実生の成長に及ぼす複合影響を調べたところ,遠赤色の割合の低下および塩分濃度の上昇は,それぞれ相対成長速度を減少させ,塩分濃度の上昇による相対成長速度の減少は,遠赤色の割合が小さい光照射下において小さかった.このことは,遠赤色の割合の低下および塩分濃度の上昇は,植物成長に拮抗的に作用したこと意味する.遠赤色の割合の大きい光照射下において塩分による成長抑制の主要因は単位葉面積あたりの同化速度の減少であった.ガス交換計測の結果から,その要因は水ストレスに起因する気孔開度の低下ではなく,葉内の光合成能力の低下と考えられた. 次に,照射光中の遠赤色の割合が異なる光源下における強い気流に対する植物応答を制御環境下において調べた.強い気流による成長抑制は遠赤色光の割合の多い光照射下ではみられたが,遠赤色光を含まない光照射下ではみられなかった.遠赤色光と気流速度の複合影響は,相対成長速度と純同化速度で似た傾向であった.よって,遠赤色光の多い光照射下で強い気流が相対成長速度を低下させた原因は,純同化速度の低下であると考えられた.遠赤色光の割合の多い光照射下では強い気流は葉へのバイオマス分配を低下させたが,葉面積比は低下しなかった.したがって,バイオマス分配の変化は強い気流による成長抑制の主要因ではなかった.強い気流が純同化速度を低下させた理由は明らかにできなかったが,葉が薄いことによって葉内の通水コンダクタンスが低下した可能性が考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物のストレス応答に関する新しい知見が得られており,概ね順調に進展していると自己評価する.天候の問題などによって自然光型ファイトトロンでの実験が遅れているが,機器は調整済みで問題なく動作しており,準備は十分にできている.
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Strategy for Future Research Activity |
自然光型ファイトトロンでの実験については準備ができているが,新型コロナウイルスの影響が夏季まで続いた場合には,実施が難しくなる可能性がある.その際は,太陽光を模擬したランプを用いて代替の実験を行う予定である.今年度において,照射光中の遠赤色光が葉の通水コンダクタンスを変化させる可能性が考えられた.このことは,植物の光応答に関する新しい展開をもたらす可能性があるため,水分生理学的な手法を用いた実験を行い,その根拠となるデータを得る予定である.
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Research Products
(5 results)