2020 Fiscal Year Annual Research Report
同位体と微生物解析による農地土壌におけるN2Oの生成経路の解明
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18H02318
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
秋山 博子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, ユニット長 (00354001)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 温室効果ガス / 一酸化二窒素 / 土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
一酸化二窒素(N2O)は強力な温室効果ガスであるとともにオゾン層破壊物質でもある。農業はN2Oの最大の人為的排出源であり、その主要な発生源である農耕地におけるN2Oの発生メカニズムの解明および発生削減技術の開発は急務である。N2Oの発生経路は主に微生物による硝化および脱窒(細菌脱窒、硝化菌脱窒、糸状菌脱窒)と考えられている。これまでの研究黒ボク土においては、硝化が本課題は、我々がこれまでに開発した温室効果ガス連続測定装置等の手法を発展させ、N2O発生メカニズムの全体像の解明を行うことにより、将来的な発生抑制技術の開発につなげることを目的とした。 ライシメーター圃場(黒ボク土、灰色低地土)において、春作と秋作の2作にわたりキャベツの栽培を行った。処理区は硝化抑制剤区および化学肥料(尿素)区の各3連とした。 その結果、いずれの土壌においても施肥後の硝化抑制剤区のN2O発生量は尿素区よりも有意に低かった。一方で収量は有意差がみられなかった。このため、硝化抑制剤区の収量当たりのN2O発生量は尿素区よりも低くなった。土壌中無機態窒素の解析より、硝化抑制剤により圃場における硝化が抑えられていることが確認された。一方で収穫後の残渣から発生するN2Oについては、処理区による有意差は見られなかった。これは収穫残渣によるN2O発生は残渣そのものから発生していること(Akiyama et al., 2020)に対し、硝化抑制剤は土壌に混和しているため、N2Oの発生部位と位置が異なること、ならびに硝化抑制剤の施用は施肥時に行っているのに対し、収穫残渣によるN2O発生は発生時期が異なるためであると考えられた。3年間にわたる圃場実験の結果から、硝化抑制剤によるN2O削減効果が確認された。さらに硝化抑制剤区においては追肥が不要となるため、省力栽培を行いながら収量を維持できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り圃場実験を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
安定同位体比解析によりN2O発生経路の推定を行う。また日本における硝化抑制剤や被覆肥料等の肥効調節型肥料によるN2O発生削減効果について、これまでに日本で行われた研究を統合的に解析し、日本の気象および土壌条件における肥効調節型肥料による平均的な発生削減効果を明らかにする。また、日本の畑土壌の約半分を占める黒ボク土は他の土壌よりもN2O排出係数が小さいことが明らかになっている(Akiyama et al., 2006)ことから、日本における肥効調節型肥料によるN2O削減効果が世界における平均的な削減効果(Akiyama et al., 2010)と異なるかどうかについて明らかにする。これにより、N2Oの発生削減技術の評価を行う
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