2018 Fiscal Year Annual Research Report
Methane mitigation from ruminants by wide range application of alkylpenol-containing plants
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18H02322
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 泰男 北海道大学, 農学研究院, 教授 (50153648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 裕 北海道大学, 農学研究院, 助教 (10793846)
小池 聡 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (90431353)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アルキルフェノール / ギンナン果肉 / カシューナッツ殻液 / 温暖化 / ルーメン / 排泄物 / メタン |
Outline of Annual Research Achievements |
温室効果ガスであるメタンは、反芻家畜ルーメン発酵産物のひとつとして生成される一方で、排泄物からも生じる。よってこれらの堆積や放置が想定される場合は低減が必要である。ギンナン果肉は抗菌性フェノール成分(アルキルフェノール)を含有しているため、牛排泄物に混和した場合、それらの菌叢および発酵産物を変化させると考えられる。そこで、ギンナン果肉がウシ糞便およびスラリーの発酵におよぼす影響をメタンをはじめとした発酵産物や菌叢に焦点を当て評価した。 ホルスタイン種乳牛の新鮮糞便および貯留スラリーを容器に分け入れ、ギンナン果肉を添加した方をギンナン区,無添加の方を対照区とした。ギンナン区にはギンナン果肉を6.4%(糞便200 gに対しギンナン果肉12.8 g)加え混合した。これらの容器を30℃のインキュベーターに入れて0、30、60、90、180日間を放置し、各放置期間終了時に,糞便またはスラリーを緩衝液で希釈しハンゲートチューブに入れ、 30℃で168時間培養した。培養後は発酵産物(ガスと短鎖脂肪酸)および菌叢の分析を行った。 糞便のメタン生成量は30日以降180日まで全期間においてギンナン区で減少した。ギンナン果肉の添加によって全期間を通して酢酸モル比は低下し、プロピオン酸モル比は上昇した。スラリーのメタン生成量はギンナン果肉の添加により、0日から90日まで期間を通じて減少した。0日ではギンナン区において総短鎖脂肪酸、酢酸およびプロピオン酸濃度は増加したが、酢酸比は低下し、プロピオン酸比は上昇した。30日以降ギンナン区では短鎖脂肪酸(特に酢酸)の蓄積が確認された。PCR-DGGEによる菌叢解析から,ギンナン果肉の添加により糞便およびスラリー双方で真正細菌叢、メタン古細菌叢ともに変化したことが確認された。これらより、ギンナン果肉は牛排泄物からのメタン削減に有効なことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
着目したアルキルフェノール含有素材の家畜排せつ物におけるメタン削減ポテンシャルを評価することがまず必須と考え、本来3年目に予定していた計画を前倒しで実施し、給与試験を後年に移動することにした。ギンナン果肉のポテンシャル評価は順調で、成果がしめすようにギンナン果肉に極めて有用なメタンガス削減効果があること、糞便やスラリーの菌叢がかわることがその主因と思われることを明示できた。したがって、研究実施項目の年度入れ替えはあったものの、本研究自体は順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に評価した素材に加え、もうひとつのアルキルフェノール含有素材であるカシューナッツ殻液についても今年度と同様のポテンシャル評価が重要と考え、初年度ギンナン果肉に対して実施したのと同じアプローチでの評価を次年度に行う。このように当初の計画と少し順序の入れ替わりがあるものの、最終的に家畜への給与試験で実証することに変わりはない。本研究の推進アプローチにマイナーチェンジを施しただけで、家畜飼養試験を最終評価の出口に置いており、家畜排せつ物の堆積・放置をソースとする温暖化ガスの削減に、標的とするアルキルフェノール含有素材(ギンナン果肉およびカシューナッツ殻液)をどのように活用するかの戦略策定に有用な成果をうることを目的に、適切に軌道修正をはかりながら研究を推進していく予定である。
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