2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on the influence of amino acid-Amadori products on protein synthesis of chicken embryonic myotubes
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18H02323
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
喜多 一美 岩手大学, 農学部, 教授 (20221913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村岡 宏樹 岩手大学, 理工学部, 助教 (50546934)
牧野 良輔 愛媛大学, 農学研究科, 助教 (80772821)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糖化反応 / アミノ酸 / 糖化アミノ酸 / アマドリ化合物 / 筋管細胞 / 細胞内取り込み / 結合タンパク質 / フルクトサミン3キナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度では、以下の3点について検討した。 1. 単冠白色レグホンの孵卵14日胚から浅胸筋を摘出し、筋管細胞を調製した。L-[5-3H]-トリプトファンとグルコースから1R, 3S)- 1- (D- gluco- 1, 2, 3, 4, 5- pentahydroxypentyl)- 1, 2, 3, 4- tetrahydro- β-carboline- 3- carboxylic acid (PHP-THβC)を合成した。3H -PHP-THβCを培地に添加し、トランスポーターによる糖化アミノ酸の細胞通過の有無を調査した。細胞を一定時間培養後、培地を除去し、細胞を洗浄した。細胞をNaOH/Triton-X溶液で溶解し、液体シンチレーションカウンターを用いて放射能を測定した。その結果、筋管細胞から放射能が検出され、糖化アミノ酸が細胞内へ取り込まれたことが示された。 2. 単冠白色レグホンの孵卵14日胚から浅胸筋を摘出し、筋管細胞を調製した。3H-PHP-THβCを培地に添加し、糖化アミノ酸結合タンパク質の存在を調査した。細胞を一定時間培養後、トリクロロ酢酸を用いて細胞を洗浄し、遊離の3H-PHP-THβCを除去した。タンパク質をNaOH/Triton-X溶液で溶解し、放射能を測定した。その結果、筋管細胞タンパク質画分から放射能が検出され、糖化アミノ酸に結合するタンパク質が存在することが示された。 3. 20日齢の単冠白色レグホン雄ヒナから浅胸筋を採取した。細胞内におけるアミノ酸アマドリ化合物を分解する酵素であるフルクトサミン3キナーゼ(FN3K)の遺伝子発現を定量RT-PCRにて解析した。遺伝子発現は、ハウスキーピング遺伝子であるS17RP遺伝子を用いて補正し、相対検量線法によって発現量を比較した。その結果、ニワトリの筋肉にはFN3Kが存在することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニワトリは高血糖動物であり、血糖値はヒトの正常血糖値の2-3倍を示す。生体内のグルコースは、アミノ酸と非酵素的に結合し、アミノ酸アマドリ化合物を生成する。ここで申請者は、アミノ酸アマドリ化合物の一部が、ニワトリ筋管細胞のタンパク質合成を促進することを見出した。そこで本研究では、アミノ酸アマドリ化合物が筋管細胞のタンパク質合成を促進する機構(アミノ酸およびグルコーストランスポーターとの関係、アミノ酸アマドリ化合物レセプターの探索、アミノ酸アマドリ化合物による細胞内シグナル伝達刺激の有無、アミノ酸アマドリ化合物によるニワトリのin vivo筋肉タンパク質合成促進の可能性)を解明することを目的とした。 2019年度では、課題③「アミノ酸アマドリ化合物は各種トランスポーターを通過するのか?」、課題④「アミノ酸アマドリ化合物は細胞内で アミノ酸とグルコースに分解し、タンパク質合成の基質とエネルギー源になるのか?」及び課題⑤「アミノ酸アマドリ化合物レセプターが存在するのか?」について研究を進めた。 課題③に関して、放射性3H -PHP-THβCを培地に添加した上で筋管細胞を培養したところ、筋管細胞内から放射能が検出されたことから、糖化アミノ酸は細胞内へ取り込まれることが示唆された。課題④に関して、放射性3H -PHP-THβCを培地に添加した上で筋管細胞を培養したところ、筋管細胞のタンパク質から放射能が検出されたことから、糖糖化アミノ酸に結合するタンパク質が存在することが示唆された。課題⑤に関しては、アマドリ化合物を分解する酵素であるフルクトサミン3キナーゼ(FN3K)の遺伝子発現を解析したところ、ニワトリの筋肉にはFN3Kが存在することが示された。 以上より、研究手法に若干の修正を加えつつも、予定された結果が得られたことから、「研究は概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度では以下の2点について研究を進める予定である。 <6)アミノ酸アマドリ化合物による細胞内シグナル伝達の存在> 単冠白色レグホンの孵卵14日胚から浅胸筋を摘出し、筋管細胞を調製する。前年度までに明らかとなったニワトリの血漿中に存在するアミノ酸アマドリ化合物を有機合成し、培地に添加する。検討するアミノ酸アマドリ化合物の候補としては、分岐鎖アミノ酸のアマドリ化合物を予定している。筋管細胞を一定期間培養後、培地を除去し、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水で細胞を洗浄する。Trizol試薬を用いて細胞からRNAを抽出し、シグナル伝達の指標としてインスリン様成長因子-Iの遺伝子発現を定量RT-PCRにて測定する。 <7)アミノ酸アマドリ化合物による in vivo 成長促進効果>20日齢の単冠白色レグホンに麻酔をかけた後、腹腔内または皮下に浸透圧ミニポンプを挿入する。浸透圧ミニポンプの中には、in vitro条件下において筋管細胞のタンパク質合成を促進したアミノ酸アマドリ化合物を封入する。腹腔内または皮下に挿入された浸透圧ミニポンプは半透膜素材で作られているため、体内の水分がポンプ内に浸透し、ポンプ内のアミノ酸アマドリ化合物がポンプ外に流出することにより体内のアミノ酸アマドリ化合物濃度を上昇させる。浸透圧ミニポンプによるアミノ酸アマドリ化合物の注入は3または7日間を予定している。アミノ酸アマドリ化合物を注入している間および注入後の体重変化を測定し、実験最終日に麻酔下で採血を行い、浅胸筋、深胸筋および大腿二頭筋の重量を測定する。血液は血漿を分離した後に高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を用いてアミノ酸アマドリ化合物の濃度を測定し、注入したアミノ酸アマドリ化合物が血中アミノ酸アマドリ化合物濃度を上昇させていたことを確認する。
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Research Products
(3 results)