2018 Fiscal Year Annual Research Report
宿主因子との相互作用解析から紐解く狂犬病ウイルス感染メカニズム
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18H02333
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 道仁 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 特任助教 (70609403)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 狂犬病ウイルス / mRNA / YB1 / 宿主因子 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
狂犬病ウイルスは致死的な神経症状を惹き起こし、毎年55,000名以上を死に至らしめる。本研究では、狂犬病ウイルス感染時のウイルスと宿主因子の相互作用解析を通じて、狂犬病ウイルスの細胞内増殖機構およびそれに対する宿主の感染制御機構の解明を目的としている。これまでに、siRNAライブラリースクリーニングを実施し、細胞の狂犬病ウイルス感受性を変化させる28個の宿主遺伝子を同定している。 本年度は、同定した狂犬病ウイルス感染に関与する28個の遺伝子のうち27個のORFをクローニングし、発現ベクターを構築した。今後、発現ベクターを使用した遺伝子発現解析を行う。 また、上記の遺伝子群のうち狂犬病ウイルスの細胞感染を促進させる宿主転写関連因子Y-box binding protein(YB1)の解析を実施した。細胞のYB-1遺伝子発現のノックダウンにより、感染細胞におけるRABV遺伝子発現量と上清中の子孫ウイルス量が減少した。cross-linking immunoprecipitation(CLIP)およびゲルシフトアッセイ(RNA-EMSA)解析により、YB-1がウイルスmRNAの5’-UTRに結合することが判明し、その標的配列 (Y-box recognition sequence, YRS) を同定した。同定したYRSは5つのRABV遺伝子全ての5’-UTRに存在していたが、各YRSは1-2塩基の相違を認めた。そこで、各YRSのいずれかを有するRABV minigenome発現プラスミドをそれぞれ作出し、レポーターアッセイを実施した結果、NおよびP遺伝子の5’-UTRに存在するYRSを有するRABV minigenomeは、M,G,L遺伝子の5’-UTRに存在するYRSを有するRABV minigenomeに比べて強いレポーターシグナルを生じた。以上の結果から、RABVは自身のmRNAに存在するYRSとYB-1の結合を介して、ウイルス遺伝子発現量を増加させ、ウイルス増殖を亢進させることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、同定遺伝子27個の発現ベクター構築を終え、次年度以降の解析に必要なツール作りを完了した。また、YB1の解析を通じ、狂犬病ウイルス感染時のウイルス遺伝子発現機構に関する新知見を得た。現在まで、計画は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き宿主転写関連因子YB1の狂犬病ウイルス感染における機能解析を実施する。昨年度に見出したYB1と狂犬病ウイルス由来mRNAの直接結合が、ウイルス遺伝子発現を変化させる機構を、培養細胞や無細胞実験系を用いて詳細に解析する。また、狂犬病ウイルス感染時のYB1タンパク質発現動態およびその細胞内局在を蛍光顕微鏡または共焦点顕微鏡下で解析する。得られた結果から、狂犬病ウイルス感染時におけるYB1の機能を考察する。 加えて、本年度はスクリーニングにより同定した遺伝子群の中から自然免疫に関与する遺伝子の機構解析を開始する。当該遺伝子発現をノックアウトした細胞をCRISPR/Cas9のシステムを用いて樹立し、狂犬病ウイルス感受性の変化を観察する。また、ノックアウト細胞における狂犬病ウイルス感染時の自然免疫応答をRT-qPCRやRNAseq法により解析する。
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Research Products
(2 results)