2019 Fiscal Year Annual Research Report
Investigating the function and transgenerational effects of sperm-retained histones
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18H02369
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 由紀 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (60546430)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 精子残存ヒストン |
Outline of Annual Research Achievements |
エピゲノム修飾は化学的に極めて安定であり、細胞分裂を越えて娘細胞に受け継がれることがら「細胞記憶」とも称される。近年はそれが生殖細胞を介して次世代に継承されるとみられる現象が、動物種を超えて多数報告されている。このエピゲノム遺伝物質の本体は未だ諸説が議論されているが、本研究課題ではヒストン(修飾)が経世代物質になり得る可能性について、特に我々が先行研究で同定した精子特異的切断型ヒストンH3に着目して検討することを目的とした。 令和元年度は精子特異的切断型H3を生化学的に単離することに成功し、ChIP-seq解析によって、そのゲノム局在を明らかにした。一方で切断型H3のゲノム局在には、ヒストンバリアント間の差異があることが示唆された。従って今後は、H3バリアント毎の検討を行う。 次にこの精子特異的H3切断に関わる酵素(プロテアーゼ)の同定を試みた。In vitroの精巣培養系に候補プロテアーゼ阻害剤を添加し、切断阻害効果を検討したが切断を阻害しなかった。また実験系にも技術的な問題があることが明らかとなった。今後は実験系の技術的な改善をはかりつつ、更なる阻害剤を使用してプロテアーゼの同定を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①精子クロマチン特異的切断H3の生化学的特性の解明:我々はH30年度に質量分析を用いて精子特異的H3切断部位を同定し、さらに切断型H3で好発する修飾を同定した。しかしながらその結果、この修飾が抗体作製に支障となることが判明し、切断型H3特異抗体の作製を断念した。代替策として生化学的に精子切断型H3を単離した。この切断型H3は免疫沈降実験でH4, H2A, TH2Bが共沈したことから、切断型H3も通常の八量体ヌクレオソーム構造をとっていると推察された。さらにChIP-seq解析によってそのゲノム局在の同定に成功した。しかしH3はバリアントによってゲノム局在が大きく異なることから、得られた結果がどのバリアントに由来する切断型H3かを確認する必要があると考えられた。さらに、精巣内生殖細胞には精子クロマチン特異的切断H3の他にもう1種類の切断型H3が存在することを予備的知見として得ていることから、精巣では生殖細胞の分化段階に応じて異なる切断型ヒストンが産生される可能性が示唆され、今後はこれらを、精子の分化段階に応じて個別に検討する必要があると考えられた。 ②精子由来切断H3の経世代影響の解明:ES細胞におけるヒストンH3切断を担うカテプシンL阻害剤を精巣組織培養に適用し、H3の切断が阻害されるか否かを検討した。その結果、カテプシンL阻害剤によって精子型ではない切断型H3の産生が阻害されることを見出した。しかし精巣組織培養が可能な期間が短いことから、精子型切断H3に対する効果の検討には至らなかった。一方でChIP-seqデータの再解析等から、H3に起こる主なヒストン修飾の中で、経世代効果にはH3K27me3が最も大きなインパクトを有することを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
①精子クロマチン特異的切断H3の生化学的特性の解明:今後は、H3バリアント特異抗体の使用や質量分析によって、バリアント毎の切断部位・切断時期およびゲノム局在を詳細に検討する。さらに、精巣内に存在する非精子型の切断型H3についても、その出現時期やゲノム局在を明らかにする。 ②精子由来切断H3の経世代影響の解明:より多くのプロテアーゼ阻害剤のスクリーニングを行う。そのために、精巣組織培養法の改良を行うことと並行して、阻害剤のin vivo局所投与なども検討し、精子由来切断型H3の産生阻害を試みる。
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