2021 Fiscal Year Annual Research Report
母性パイオニア転写因子Gataによる胚性発生プログラムの開始機構
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18H02376
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今井 薫 (佐藤薫) 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (00447921)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物胚の胚性のゲノムからの転写開始は、卵内に蓄えられた母性転写因子によってはじめられる。ショウジョウバエのZeldaやゼブラフィッシュのOct5、SoxB1などがこの例として挙げられる。これらの転写因子はパイオニア転写因子として知られ、凝集したクロマチンに結合して弛緩させ,他の転写因子などをリクルートする働きを持つ。最近の私達の研究の結果から、脊索動物であるホヤの胚では、Gata.aが母性のパイオニア転写因子として胚性ゲノムからの転写開始に関わることが明らかになってきた(Imai KS, et al. Developmental Biology,2020,458,215-227.)。さらにこれまでの研究により、Gata.a以外にも2つの母性転写因子が胚性ゲノムからの転写開始に必要であることが明らかになってきた。ホヤの胚は、最も初期に発現する遺伝子が、どの細胞で、いつ、どのような機構で発現するのか、が正確にわかっているユニークな実験系である。この特徴を生かして母性因子から胚性ゲノムによるコントロールへの移行の過程の分子機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ホヤ胚では、8~16細胞期に胚性のゲノムからの遺伝子発現が始まる。これまでの研究の結果、Gataが胚性のゲノムからの遺伝子発現に必要であるということを明らかにし,この結果を論文としてまとめた(Imai KS, et al. Developmental Biology,2020,458,215-227.)。しかし、Gataのみでは遺伝子発現を異所的に誘導するには不十分であることも明らかになった。そこでGataと共に初期胚での遺伝子発現に働く転写因子を探索した結果、2つの候補遺伝子が見つかった。この2つの母性転写因子はGataと同様に母性的に発現しており、モルフォリノオリゴヌクレオチドを用いて機能阻害すると、初期胚での遺伝子発現を減少させる。GATAを含むこれらの3つの母性転写因子を同時に機能阻害した胚において、胚性遺伝子の発現がほとんど阻害されていることをRNA-seqにより確認した。そこで、Gataと2つの母性転写因子を尾芽胚に強制発現することにより、異所的に16細胞期で発現する遺伝子を活性化することができるかどうかも確かめるために 3つの転写因子を強制発現させた尾芽胚のRNA-seqを行ったその結果、16細胞期で発現する遺伝子の大半が活性化されていたが、それと同時にその他の時期に発現する遺伝子も多数活性化されていた。この結果からGataを含む3つの母性因子が16細胞期の遺伝子を特異的に活性化したわけではないので、解釈が難しく、さらなる実験が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で述べたようにGataと2つの母性転写因子を強制発現させた尾芽胚のRNA-seqを行った。この実験は、Gataと2つの母性転写因子を強制発現することにより、異所的に16細胞期で発現する遺伝子を活性化することができるか確認するために行った。その結果、Gataを含む3つの母性因子が16細胞期の遺伝子を特異的に活性化したわけではないので、解釈が難しく、さらなる実験が必要である。例えば、Gataと2つの母性転 写因子が8細胞期と16細胞期のクロマチンをオープンにするために必要か確かめるために、Gataと2つの母性転写因子をモルフォリノオリゴヌクレオチドを用いて機能阻害した胚でATAC-seqをする予定である。
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