2019 Fiscal Year Annual Research Report
Systematic mutational analysis of a relationship between a protein's immunogenicity and aggregation tendency using Solubility Conttroling Peptide (SCP) tags
Project/Area Number |
18H02385
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
黒田 裕 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10312240)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 生物物理 / バイオインフォマティクス / バイオテクノロジー / 免疫原性 / ウイルスタンパク質 / デング / 溶解性制御タグ / 免疫増強 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者が開発したSCPタグ(ペプチド系溶解性制御タグ)を用いて、抗原タンパク質の凝集又は会合が、その免疫原性に与える影響とその分子機構を物理化学的な視点から系統的に解析することを目的とした。SCPタグは、対象タンパク質の末端に付加することで、溶媒条件を変えずにタンパク質の溶解性のみを制御するための3~5残基の短い配列である。 SCPタグの免疫原性への効果が普遍的であることを示すため、研究代表者がタンパク質の折り畳み研究で用いた牛膵臓トリプシン阻害タンパク質(分子量=6.5kDa)と、アジアの広い地域で公衆衛生上の大きな問題となっているデング熱の病原体であるデングウイルス由来の糖エンベロープタンパク質第3ドメイン (以下ED3; 分子量=12kDa)を用いた。ED3は、ウイルスと宿主細胞の膜融合に必須な部位と抗体認識部位の両者を有するため、ウイルス感染において極めて重要なタンパク質である。昨年度は、SCPタグをED3タンパク質の末端に付加することで会合度が制御可能であることを示し、会合度の温度、濃度及びSCPタグ配列種の依存性を、生物物理学的な測定を用いて詳細に検証した。令和元年度には、Ile から成るSCPタグ付加して会合させたED3を用いた免疫応答実験を本格的に実施した。SCPタグ付加ED3をマウスに週1回、5週間皮下注射し、その尾から血液を採取して、ED3のインビボ免疫原性をELISA法によって測定した。その結果、4か5残基のIleから成るSCPタグが免疫原性を飛躍的に向上させることを明らかにした。さらに、SCPタグの免疫原性向上のメカニズムを解析し、長期免疫記録が取得されていることが示唆された。今後は、SCPタグによる免疫原性の向上メカニズムをさらに詳しく調べ、抗デングウイルスワクチンの開発への応用を検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画開始直後は試料調整に遅れが出てしまい、全体的に遅れ気味になった。しかし、試料調整の問題が解決した後の実験は順調に進み、特に免疫実験においては、一部の実験が前倒しで遂行出来た。ただし、現在はコロナウイルスのため緊急事態が発生しており、再び進行が遅れ気味になりつつあるが、6月から一部の実験再開を目指している。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度の実験は順調に進み、会合体形成と免疫原性の間に強い相関があることが示せ、さらに免疫原性向上のメカニズムを探り始めている。今後は、凝集による免疫原性向上の分子機構をさらに詳しく解明し、長期免疫記録の取得の有無を詳しく調べる予定である。さらに、SCPタグによる免疫原性の向上を、ワクチン開発への応用を検討する予定である。
|