2019 Fiscal Year Annual Research Report
膜外コンポーネントと共役して機能する新奇ABC輸送体の構造機能解析
Project/Area Number |
18H02386
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
村上 聡 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30300966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 新一郎 盛岡大学, 栄養学部, 教授 (30338751)
徳田 元 盛岡大学, その他部局等, 名誉教授 (40125943)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 構造生物学 / 膜輸送 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、既報のアシネトバクター由来のマクロライド排出トランスポーターの結晶構造が3.4Å分解能で留まったのに対し、2.5Åを上回る大幅なる分解能の改善が見られた新奇ホモログの結晶構造解析を完了した。さらに、この構造は、上述の既報アシネトバクター由来トランスポーターと比べ、基質輸送に重要な働きをもつペリプラズムドメインの立体構造に構造変化を認め、同輸送体による、作動メカニズムの考察にも適した構造であることが判明した。本年度は共同研究者である岡田助教により基質との共結晶化が進められた。基質結合を生化学的に確かめ、幾分弱いながらも結合を認めた基質に対して共結晶化を試みたが、今のところ差フーリエなど明確な基質の電子密度は得られて居ないが、2020年度中の共結晶構造解析を目指す。 また、大腸菌由来Ec-LolCDEにおいては全てのサブユニットを共発現させる系において結晶解析に十分な量を高純度で得る系の構築に成功したものの、高濃度において幾らか非特異的凝縮を起こす傾向が如何ともしがたく、他の生物種由来の大量発現系の構築についても並行して検討した。機能解析についても盛岡大グループとの共同で進めており、基質の認識と細胞膜からの基質輸送について活性測定を行う系の構築を行った。 加えて、大腸菌由来EcLolCDEと共役して機能する蛋白質との共結晶化に向けた精製系の構築を行った。複数種の発現系から効率よく複合体を形成する系の構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々がターゲットにしているTripartite-type ABCトランスポーターは、我々を含む世界の3グループ(英国、中国)の熾烈な構造解析競争になっている。いずれのグループも概ね3.5-3.3Å分解能に留まっており、基質の認識やその輸送機構の詳細な解析には十分とは言えない。今年度我々は、2.5Åを越える原子レベル分解能での構造解析を完了させた。これは他のグループに対して数馬身の差をつけたことになり、研究目的達成に向けて順調に進んでいると考える事が出来る。焦眉の急は、基質結合体の結晶化であり、その成否により評価を大きく分けるかも知れないが、我々は、折角得たこの優れた実験系を用いて、しっかりと基質認識およびその輸送機構の本質的解明に向けた研究を進めてゆきたいと考えて居る。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況の項でも書いたが、焦眉の急は完了させた高分解能の結晶を得る実験系を利用して、さらに基質結合体の結晶化を進めることである。高分解能で構造が得られるメリットは、占有率が低い、あるいは温度因子が高いといった弱い基質結合に見られる構造解析上のデメリットを補うものであり、最終年度ではあるが、今得られているデータを小出しに論文化を急ぐのでは無く、この好機を生かし、Tripartite-type ABCトランスポーターの基質認識およびその輸送機構の本質に迫る構造情報を得ることに注力して行きたい。あいにく新型コロナウイルスの悪影響により現在、大型放射光施設の利用ができないばかりか、大学の施設も研究で使用出来ない状況下にあり、優位性を維持するために一刻も早い研究活動の再開が望まれる。
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