2019 Fiscal Year Annual Research Report
インテグリン-ラミニン複合体の結晶構造解析による分子認識機構の解明
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18H02389
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
有森 貴夫 大阪大学, 蛋白質研究所, 特任助教(常勤) (80582064)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞接着 / 結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外マトリックス中のラミニンと細胞膜上の受容体であるインテグリンを介した細胞接着は,細胞の増殖や分化など様々な細胞活動に関与する細胞生存に欠かせないイベントであるが,その分子認識機構の研究はインテグリンファミリー分子の中でも最も遅れている.その理由の一つは,これらの分子の立体構造情報がほとんどないためである.本研究では,インテグリン-ラミニン複合体の立体構造を明らかにし,その分子認識機構を詳細に解明することを目的とする. 前年度までに,様々な条件検討の結果,インテグリンα6β1とラミニン511の安定な複合体試料が得られる条件を見出し,その複合体試料の結晶も得られていた.しかし,構造解析を行えるほどのX線回折強度を示す結晶の調製が難航したため,クライオ電子顕微鏡(cryo-EM)による構造解析を目指すことにした.結晶化に使用した試料を用いてcryo-EM画像を取得し,単粒子解析を行った結果,3.9 Å分解能のcryo-EMマップを取得することに成功した.本複合体に含まれる各分子の結晶構造を初期モデルとして用いてcryo-EMマップに当てはめた後,マップとモデルに相違がみられる箇所のモデル修正を行い,世界初となるインテグリンα6β1-ラミニン511複合体の原子モデルを構築することに成功した.我々が以前に決定したインテグリンα6β1の結晶構造と比較すると,複合体構造では,ラミニン511の結合によりインテグリンα6β1が大きく構造変化を起こし,他のインテグリン分子でも見られるような活性型の構造(open conformation)をとっていることが明らかになった.また,インテグリンとラミニンの相互作用インターフェースが明確になり,これまで予想されていなかった新たな相互作用部位を発見した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最大の目的であったインテグリンとラミニンの複合体の構造を決定することに成功し,分子認識機構を解明する上で極めて重要な知見を得た.そして最終年度にこれらの成果をまとめた論文を投稿する目途が立った.以上のことから,本研究は非常に順調に進行しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で決定したインテグリンとラミニンの複合体構造から,両者の結合に重要なアミノ酸残基が多く示唆された.そこで,それらのアミノ酸に変異を導入し,これらの変異体の結合能を評価することで,複合体構造の妥当性を検証する.構造情報と変異体実験の結果から,インテグリンによるラミニンの認識機構を明らかにする.また,これまでにヒトでは24種類のインテグリン分子が存在することが知られているが,インテグリンα6β1と同様にラミニンを認識するものが他に3種あり(いずれも構造未知),ラミニン認識に関与するアミノ酸がそれらのインテグリンで保存されているかどうかを調べる.さらに,これまでに報告されているラミニン以外のリガンドを認識するインテグリンの立体構造と比較することで,各インテグリンがいかにして異なるリガンド分子を識別しているのかを明らかにしていく.以上の成果をまとめて論文を作成し発表する.
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