2020 Fiscal Year Annual Research Report
膜環境変化に伴う膜タンパク質の機能-ダイナミクス相関の解析
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18H02393
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高橋 栄夫 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (60265717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 恒 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (20581284)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NMR / 膜タンパク質 / 界面活性剤 / 脂質 / 酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
多様な膜環境下における膜タンパク質の機能-動的構造相関についての知見を得る目的で研究を進めている。大腸菌由来膜内プロテアーゼGlpGについて、昨年度まで活性評価の対象としていた可溶性カゼイン基質に対し、今年度は、本来の基質である膜貫通型基質を対象とした活性評価を行うため、その発現系の構築を行った。調製した三種(TatA、Gurken、HybA)の膜貫通型基質を用い、異なる界面活性剤環境中における基質切断活性を検討したところ、可溶性基質とは異なる界面活性剤依存性を示したうえに、基質の種類によっても切断活性が異なってくることが明らかとなった。この結果から、膜周辺環境の相違は膜タンパク質のみならず基質の構造状態も変え、切断活性に影響を与えると考えられた。今後は膜貫通型基質の構造状態に着目した解析も行っていく。 高分解能なNMRスペクトルを得る条件が確立できた好熱細菌由来光受容膜タンパク質については、三重ラベル(2H, 13C, 15N)試料を作製しNMRシグナル帰属を試みたが、その高い熱安定性から分子内部のD/H交換が不十分となり、分子全体のNMRシグナル帰属については完遂できなかった。試料調製プロトコルの大幅な改良を行った結果、最終的には高効率に水素交換した試料を調製することに成功し、現在NMRシグナル帰属実験・解析を実施中である。一方、多様な脂質二重膜環境におけるNMR解析を指向し、ナノディスクに内包した光受容体膜タンパク質試料の調製方法の検討、および溶液NMR解析を進めている。通常の精製法で調製した光受容体を用いた場合は分子凝集が顕著であったが、改良した精製プロトコルを採用することで想定されるサイズのナノディスクを調製することができた。今後多様な脂質二重膜系に内包された膜タンパク質試料として、その機能およびダイナミクスを解析できる見通しが立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜内プロテアーゼ活性の膜周辺環境との相関を解析するうえで、これまでその簡便さから可溶性カゼイン基質を使用していたが、真の活性評価という観点では、膜貫通型基質で評価を行うことが重要であり、今年度、その評価を行える膜貫通型基質発現系を構築し、活性評価ができるシステムを確立できた。 一方、高分解能NMRスペクトルが取得できている光受容膜タンパク質は、原子レベルでのNMR解析を行えることが期待できるものであるが、精緻なNMR解析を実施するためには、主鎖NMRシグナルの帰属が必要となる。帰属のための試料調製において必須となる重水素ラベル試料は調製できたものの、その高い熱安定性のためアミド水素のD/H交換が不十分であり、部分的なシグナル帰属しか進められなかった。そこで試料精製法を根底から見直し、リフォールディングを活用する方法を採用することで、水素交換を促進し、全シグナルが観測可能な試料を調製することに成功した。現在NMRシグナル帰属作業を実施中である。また、本研究においては、汎用的に用いられる界面活性剤中の構造解析だけでなく、様々な脂質二重膜中における膜タンパク質の機能・構造解析が重要となるが、それを可能とするバイセル、およびナノディスク調製が可能となってきた。 以上より、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
膜内プロテアーゼを対象とした構造解析においては、メチル基をプローブとしたNMR構造解析が主となる。現在、アミノ酸選択標識試料の調製、部位選択標識体によるNMRシグナル帰属を進めており、これまでに得られた機能的な知見をもとにしたNMR解析を実施する。また、膜環境の相違による膜貫通型基質の構造特性の相違についても注目すべきことが明らかとなったため、より詳細な機能解析、および確立した発現系を活用した基質のNMR構造解析も試みる。光受容膜タンパク質系については、現在進行中の主鎖シグナルの帰属を完了し、異なる膜様環境が、分子全体の構造・ダイナミクスに及ぼす影響を解明するためのNMR解析を実施する。
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