2019 Fiscal Year Annual Research Report
PI(4)P依存的な小胞体-細胞膜接触部位による細胞運動制御機構の解明
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18H02400
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中津 史 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (50360607)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イノシトールリン脂質 / 脂質交換輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず、細胞膜のPI4Pを急速に分解する手法の確立を行った。これを行うために、PI4P脱リン酸化酵素の酵素ドメインを細胞膜に急速にリクルートする手法の確立を目指した。mTORのFKBP12ラパマイシン結合ドメインであるFRBを、ミリストイル化により細胞膜に局在化させた。そして、FK506結合タンパク質FKBP12をイノシトールリン脂質脱リン酸化酵素ドメインに融合したキメラ分子を発現させ、ラパマイシンを添加することで、このキメラ分子を細胞膜に急速にリクルートする系を作成した。この系を用いて、細胞膜のPI4PをPI4P特異的プローブであるOSBP-PHを用いて検出したところ、ラパマイシン添加後急速に細胞膜PI4Pの減少が確認され、FRB-FKBPシステムによるPI4P脱リン酸化ツールを樹立することができた。 また、新たに同定した小胞体―細胞膜接触部位局在分子については、その機能を探るために、APEX2を用いた近傍分子ラベル化法による結合分子の探索を行った。そのために、小胞体―細胞膜接触部位局在分子をAPEX2に融合し、局在すべき膜接触部位に局在化する条件(リンカー長を含む融合タンパク質コンストラクトの条件や細胞種など)を決定した。そして、最適化した条件を用いて、APEX2による近傍分子ラベル化を行い、これを生化学的に濃縮したのちに、質量分析により結合分子の探索を行った。その結果、小胞体―細胞膜接触部位に局在することが知られている既知分子が同定されたことから、この手法が機能していることが示唆された。現在、候補結合分子群の解析を行っている。 さらに、オキシステロール結合タンパク質ファミリー分子のノックアウト・ゼブラフィッシュの組織学的解析に着手した。主要な組織について、形態の異常などの有無について解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞膜のPI4Pを急速に分解するツールは、期待どおりに機能することが確認できた。またノックアウト・ゼブラフィッシュモデルの組織学的解析にも着手している。そして新たに同定した小胞体―細胞膜接触部位局在分子の機能解明に向けた結合分子の探索については、APEX2を用いた近傍分子ラベル化法により行うための条件検討に予想以上に時間を要したことから、進捗状況として「やや遅れている」とした。最終的には、最適な諸条件を決定し、その候補分子群を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
ノックダウン、ノックアウトおよび作成した細胞膜PI4P分解ツールなどを用いて、細胞運動機能の解析をイメージング、細胞生物学、脂質生化学的手法により進める。新規小胞体―細胞膜接触部位局在分子については、結合分子の同定作業およびノックダウンもしくはノックアウト手法による機能阻害の影響を解析し、総合的にその機能解析を進める。ゼブラフィッシュモデルの解析は、組織学的解析を引き続き行いつつ、トランスクリプトーム・プロテオーム比較解析などを合わせて行い、その表現形解析を進める。
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