2018 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation mechanisms of receptor activity by glycolipids as revealed by high-resolution single-molecule imaging
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18H02401
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
鈴木 健一 岐阜大学, 研究推進・社会連携機構, 教授 (50423059)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糖脂質 / GPIアンカー型タンパク質 / 細胞膜ドメイン / ラフト / 1分子観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
生きている細胞の形質膜上において、ラフト親和性の糖脂質やGPIアンカー型受容体を高精度1分子観察した結果に基づいて、我々は次のラフト仮説を提案している。GPIアンカー型受容体や糖脂質は、特異的ホモダイマーを形成し、ラフトの基本ユニットとなる。GPIアンカー型受容体基本ユニットは、刺激後に脂質の協同的相互作用によって、安定なGPIアンカー型受容体会合体ラフトを形成し、シグナル変換のプラットフォームとなる。糖脂質の基本ユニットは、膜受容体の活性制御を行なう。 前年度までに、様々なGPIアンカー型受容体や糖脂質ガングリオシドが、コレステロールにより安定化された短寿命のホモダイマーを形成することを発見し、GPIアンカー型受容体やガングリオシドのホモダイマー形成に一般性があることを見出した。当該年度、ガングリオシドのシアル酸のないアシアロガングリオシドや、さらに糖鎖の短い糖脂質はホモダイマーの寿命が短くなっていくため、どの糖鎖もホモダイマー形成に重要であることが示唆された。また、EGF受容体のN型糖鎖を欠損させたミュータントの1分子観察後に輝点強度分布を測定したり、N型糖鎖ミュータントとGM3プローブとの2色同時1分子観察を行った。結果、N型糖鎖のうちの2か所がないと、EGF受容体のダイマーの割合が有意に増加し、GM3ホモダイマーとの相互作用時間も短くなった。この結果から、EGF受容体のN型糖鎖のどれが、GM3との相互作用やEGF受容体ダイマー形成の制御に必要であるかを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GPIアンカー型受容体や糖脂質のホモダイマーの一般性を検証するのが、本研究の最初の目標であった。多種類の分子についてホモダイマー形成を確認でき、目標を達成できた。また、GM1やGM2などは糖鎖が分岐しているが、シアル酸の方に蛍光プローブを結合させたものと、逆の分岐の先端に蛍光プローブを結合させたものとが、それほど違わないホモダイマー寿命を示していた。さらに蛍光プローブがATTO594でもATTO488でもホモダイマー寿命には違いがみられないことも明らかになった。これらは、蛍光プローブの標識が糖脂質のホモダイマー形成にあまり影響を与えていないことを示唆している。また、糖脂質のどの糖鎖が重要かを同定する実験も順調に進んでいる。さらに、糖鎖の中の官能基を一つづつ欠損したアナログ体を合成することと、どの官能基がホモダイマー形成に重要かを同定する実験も順調に進んでいる。この実験結果と分子動力学シミュレーションの結果がマッチするかどうかを検証していく予定である。 EGF受容体のどのN型糖鎖がGM3との相互作用に必須であるかを同定することにも成功した。また、このN型糖鎖は、EGF刺激後の受容体のダイマー形成や活性化制御にも重要であることが明らかとなった。これまでのところ、当初の実験計画通りに進んでおり、順当だと言える。今後のさらなる研究により、糖鎖相互作用や協同的なラフト相互作用の理解が急速に進むかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらにGPIアンカー型受容体や糖脂質のホモダイマー形成機構の詳細を明らかにし、ホモダイマーによる受容体活性化機構、あるいは受容体活性化制御機構を解明していく。そのため、まず、GM3の官能基が欠損したアナログ体のダイマー形成能を調べ、ホモダイマー形成に必須な官能基を決定していく。次に、GM3ホモダイマーによるEGF受容体活性制御の詳細をさらに解明していく。GM3のシアル酸の中のカルボン酸をヒドロキシメチル基に変換しても、EGF受容体との相互作用期間の寿命に違いは見られず、逆にEGF受容体のjuxtamembraneのリジンをグリシンに変換しても、GM3との相互作用期間の寿命に有意な違いは見られなかった。この結果は、GM3のシアル酸のアニオンとEGF受容体のカチオンとの静電的な相互作用がGM3とEGF受容体との相互作用の駆動力とはなっていないことを示唆している。この実験結果を受けて、さらにEGF受容体とGM3の相互作用で、GM3中のシアル酸の中のどの官能基が重要かを、2色同時1分子観察で探っていく。 GM3のどの官能基がEGF受容体との相互作用に重要であるかを同定できたら、GM3との相互作用に重要であると同定されたEGF受容体のN型糖鎖の構造も考慮しながら、分子動力学シミュレーションを行っていく。これにより、GM3ホモダイマーの糖鎖とEGF受容体のN型糖鎖との相互作用の詳細を明らかにしていく。
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