2019 Fiscal Year Annual Research Report
Germline genome integrity maintained by small RNA-mediated chromatin regulation
Project/Area Number |
18H02421
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岩崎 由香 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80612647)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | RNAサイレンシング / ゲノム安定性 / ゲノム高次構造 / エピゲノム制御 / クロマチン因子 / RNA結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエPIWIタンパク質のうち核に局在するPiwiは,小分子非コードRNAであるpiRNAと複合体を形成し,標的トランスポゾンの転写をH3K9me3修飾やリンカーヒストンH1を介して制御することが知られている.このPiwi-piRNAによるエピゲノム制御がショウジョウバエ生殖ゲノム維持に必須であると考えられているが,そのメカニズムは不明である. 本研究はこれを明らかにすべく,本年度は,平成30年度に同定された新規関連因子Nxf2の詳細な機能解析を中心に進めた.Piwiタンパク質が標的遺伝子をサイレンシングする際に形成する複合体構成因子を同定するために,Piwi-piRNAのヘテロクロマチン形成に必須とされている因子Panoramix (Panx)に対する抗体を作成し,これを用いた免疫沈降実験により新たにNuclear export factor 2 (Nxf2)およびp15/Nxt1がPanxおよびPiwiと複合体を形成することを明らかにし,この複合体をPPNP複合体(Piwi-Panx-Nxf2-p15複合体)と名付けた.Nxf2は卵巣特異的に発現し,RNA核外輸送因子Nxf1と類似したドメイン構造をもつことが知られているが,その機能は未知である.ショウジョウバエ個体の解析結果から,Nxf2がPiwiと同様に不妊の原因遺伝子であることを見出した.さらに,Nxf2はPiwi-piRNA経路でH3K9me3修飾およびH1結合量を制御し,標的トランスポゾンを抑制することを示した.また,Nxf2が標的トランスポゾンの転写産物と直截的に相互作用すること,およびこの相互作用がPiwi依存的であることを明らかにした.これらの結果から,PiwiがNxf2-p15およびPanxと形成する複合体が標的トランスポゾンのRNAと結合することでヘテロクロマチン形成が引き起こされるというモデルが考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Piwi-piRNAがどのように標的遺伝子を認識しているかについてはこれまで不明な点が多かった.本研究成果として,Nxf2(Nuclear RNA export factor 2)と呼ばれる新たなPiwi-piRNA関連因子がPiwiと複合体を形成し,そのRNA結合能をもってpiRNA標的トランスポゾンと複合体を結合させることでトランスポゾンを抑制していることを明らかにした.Nxf2が結合するRNAをCLIP-seqを用いて網羅的に同定することに成功し,確かにpiRNA標的トランスポゾン転写産物特異的なNxf2の結合を見出した.また,ショウジョウバエ個体を用いた解析により,Nxf2ノックダウンショウジョウバエが不妊になることを示した.さらにはショウジョウバエ個体を用いてNxf2をレポーター遺伝子に強制的にテザリングする実験を行った結果,Nxf2のテザリングに伴いレポーター遺伝子でサイレンシングが起こることを確認した.これらの結果は,Nxf2がショウジョウバエ個体の不妊の表現型にも寄与することを示す重要な結果である.ここに挙げた研究成果と新学術領域研究課題で得られた成果をまとめ,論文として発表した(Murano and Iwasaki et al., EMBOJ 2019).
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果から,Nxf2と呼ばれる新たな因子がPiwi-piRNAによるトランスポゾンのサイレンシングにおいて必須の働きをしていることが明らかになった.その一方で,Nxf2を介した転写制御機構について不明な点もいくつか残されている.まず一点目として,Nxf2はヘテロクロマチン形成以前に抑制性ヒストン修飾非依存的にトランスポゾンの発現を抑制しているという結果も得られているが,このヘテロクロマチン形成非依存的な転写制御を引き起こすメカニズムは明らかになっていない.二点目としては,Nxf2がRNA核外輸送ファミリーの一因であり,mRNAの核外輸送を行うNxf1と同様のドメイン構造をもちながら,現段階ではRNA結合能を用いてPiwi-piRNA経路に関与しているという結果のみが得られており,それ以外のドメインに関連する何らかの機能がPiwi-piRNA経路でも必須の働きをする可能性については不明である.本年度はこれら二点にフォーカスして解析をすすめ,本研究で同定されたNxf2を中心にPiwi-piRNAによる転写制御の知見をさらに知見を深めていきたい.
|
-
[Journal Article] Nuclear RNA export factor variant initiates piRNA‐guided co‐transcriptional silencing2019
Author(s)
Murano K, Iwasaki YW, Ishizu H, Mashiko A, Kondo S, Adachi S, Saori S, Saito K, Natsume T, Siomi MC, Siomi H
-
Journal Title
The EMBO Journal
Volume: 38
Pages: e102870
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-