2019 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子発現の環境応答量は発現量ゆらぎを用いて予測できるか?
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18H02427
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津留 三良 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (80594506)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子の発現状態を予測することは、生物に対する理解度を測る一つの尺度である。遺伝子の発現状態は、何を指標にすればどれくらい予測できるだろうか?近年の研究から、環境変化による発現変化量(環境応答量)と環境変化前のノイズによる確率的な発現変動(ゆらぎ)の大きさが正の相関関係をもつことが示唆されている。本研究の目的は、遺伝子の発現状態を予測する新たな手法を築くため、この正の相関関係がより多くの遺伝子で一般的に成り立つかを調べることである。そのために、大腸菌の多数の遺伝子に着目し、様々な環境条件下で発現量とそのゆらぎを計測する。そして環境変化前のゆらぎから環境応答量をどの程度説明できるか検証する。さらに、予測精度が遺伝子のどんな特徴によって左右されるかを明らかとし、予測精度を今後改善するための指針を提示する。本研究では、大腸菌の各遺伝子の発現量が黄色蛍光タンパク質YFPによって標識された大腸菌ライブラリーを様々な環境条件で培養し、蛍光顕微鏡観察等によって各遺伝子の発現量を個体レベルで計測し、環境変化前後でのゆらぎ(分散)と環境応答量(平均変化量)が遺伝子ごとに対応づけられた実験データを取得する。2019年度は、これまでに改良を施した大腸菌ライブラリーについて、蛍光顕微鏡観察を行った。昨年度の改良(恒常発現する蛍光タンパク質CFPの導入)により、細胞が密集した画像であっても、大腸菌各個体の識別が精度よく行えることが確認できた。また、微細加工技術を用いて、多数の大腸菌の顕微鏡画像を高速に得るためのデバイス開発を行った。この計測基盤を用いて、改良型大腸菌ライブラリーのYFPの蛍光画像の解析を行い、YFP融合タンパク質の凝集などの技術的な不具合がなく、観察に適したライブラリーの選別を行った。以上の結果、本研究課題の遂行に必要な大腸菌変異株と高速計測技術が準備できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標としていた顕微鏡観察の高速化を達成するデバイス開発を迅速に行えたたため、概ね順調に進行していると考えられる。実験を進行する過程で、融合蛍光タンパク質の凝集が生じ、遺伝子発現量の定量が適切に行えない大腸菌変異体が見つかるなどの計画外の事案も発生したが、顕微鏡観察の高速化によって、許容範囲内の計画延長で迅速に解決できた。
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Strategy for Future Research Activity |
選別を行った改良型大腸菌ライブラリーを様々な培養条件で培養し、蛍光タンパク質の発現量の計測を行っていく。また、フローサイトメトリーなど、他の高速な個体計測手法による発現量の定量も並行して行い、実験結果の確からしさと再現性の確認も進めていく。
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