2021 Fiscal Year Annual Research Report
ミニマムゲノム細菌を用いた遺伝子機能の網羅的同定による生命の基幹システムの理解
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18H02433
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
柿澤 茂行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10588669)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細菌 / ゲノム / 必須遺伝子 / マイコプラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年作成された「ミニマムゲノム細菌」を用い、その機能未知遺伝子の機能を網羅的に解明することで、生物にとって必須な基本システムの全容を解明することを目的とする。ミニマムゲノム細菌は必須遺伝子もしくは準必須遺伝子のみを残したゲノムを持つ細菌であり、473遺伝子(531 kbpのゲノム)のみを持つ。しかし驚くべきことに、この473遺伝子のうち149遺伝子(31.5 %)が機能未知遺伝子であることが分かり、細菌が持つ遺伝子の機能についてあまり理解が進んでいない現状が浮き彫りとなった。本研究では、これらの必須かつ機能未知な遺伝子の機能解明を行うことで、生命システムのより深い理解を目指す。 本年度は、マイコプラズマにおいて有効であるテトラサイクリン誘導プロモーター系を用い、これを特異的遺伝子ノックダウン(発現抑制)系であるCRISPR interference(CRISPRi)と組み合わせ、ミニマムゲノム細菌の複数の必須遺伝子をターゲットとし、狙ったタイミングでの遺伝子ノックダウンを引き続き行った。ミニマムゲノム細菌の持つ遺伝子は、ほぼすべてが必須もしくは準必須遺伝子(ノックアウトできるが、ノックアウトすると生育が悪くなると予測される遺伝子)であると思われ、それらの遺伝子が常時ノックダウンされていては菌体の増殖に影響が出るため、発現のオン/オフを行う系が必要となる。その結果、複数の遺伝子について効果的なノックダウンが可能であり、それに伴ってターゲット遺伝子のmRNAの有意な減少、もしくは生育の有意な阻害が認められた。ノックダウン後の細胞を観察したころ、大きな変化は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度までに得られた結果をさらに進展させ、テトラサイクリン誘導プロモーター系と特異的遺伝子ノックダウン系であるCRISPR interference(CRISPRi)とを組み合わせた研究結果が得られ、またノックダウン後の細胞の観察結果が得られた。これにより、必須遺伝子であっても任意のタイミングでの発現抑制が可能となり、たとえば対数増殖期までは通常通り生育させ、任意のタイミングでテトラサイクリンを追加することで、狙った1遺伝子の発現のみをダウンすることが可能となる。これにより必須遺伝子の機能解析の可能性が飛躍的に広がった。また細胞の解析結果を引き続き行う必要性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、開発した系を多くの遺伝子へと拡張し、さまざまな遺伝子の細胞内での機能を解析する。手法としては、プラスミド上のガイドRNAの20塩基を改変することで可能となるため、比較的容易に拡張が可能である。これによりゲノムワイドの遺伝子機能解析が可能となると期待される。またノックダウン後の細胞の性質や生育速度、細胞形態などを詳細に解析する。
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