2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18H02445
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
齋藤 大介 九州大学, 理学研究院, 教授 (90403360)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 始原生殖細胞 / PGC / ニワトリ胚 / 血行性転移 / 生殖腺 / 細胞外環境 / 細胞移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は計画通り、「胚体外での生殖細胞の移動機構」を明らかにするべく、ニワトリ胚とその始原生殖細胞を材料として研究を進めた。 代表者が前年度整備したニワトリ始原生殖細胞の培養法を用いて、始原生殖細胞において移動に関わる誘引因子・接着因子の探索を進めた。RNA-seq.データおよび免疫染色により、接着因子N-CAM1が始原生殖細胞において高発現することを突き止めた。この遺伝子をRNAi法によってノックダウンし、90%効率のノックダウンを達成することができた。興味深いことにN-CAM1ノックダウン始原生殖細胞は培養皿内で細胞凝集を作ることがわかった。N-CAM1が接着因子である事実とは相反する結果が得られてきた。また、N-CAM1のノックダウンにより、一部の生殖細胞マーカー、幹細胞マーカーの発現に影響は見られなかったが、細胞増殖速度は有意に減少することがわかった。 本年度は細胞膜をEGFPにてラベルした始原生殖細胞を作成し、ニワトリ胚の血管内にそれらを移植し、ライブイメージング解析を行った。始原生殖細胞は血管内から血管外へ抜ける際に、「膜ブレブ」と呼ばれる細胞突起構造を血管内皮層を超えて間充織側に伸ばし、その方向に抜けていくことがわかった。膜ブレブは培養がん細胞においても観察される構造であり、がん細胞と生殖細胞の関連を考える上でも興味深い知見が得られた。また、膜ブレブ挙動が生体内で観察されたことはあまり報告がなく、この点で貴重なデータが得られたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の始原生殖細胞の培養条件の見直しが大幅に進んだことを基盤として、本年度は始原生殖細胞の遺伝子操作が格段に容易になった。これにより、N-CAM1をはじめとした接着分子の移動における役割の解析や、移動中の細胞挙動の特定などが可能となってきた。本来の目的である「始原生殖細胞の胚内移動機構」の理解に近づくことが想定よりも早くできていると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子導入技術が格段に改善できた本状況下にあるので研究を加速させる。N-CAM1ノックダウン始原生殖細胞を胚内に移植し、N-CAM1の移動における役割を解明する。また、N-CAM1のノックダウンがどのようにして細胞凝集につながるのかについてを、接着因子カドヘリン との関係から明らかにしたいと考えている。 胚内における膜ブレブの形成機序、特に方向性を持った形成機構について、様々な遺伝子ツールを用いて明らかにしていきたい。血管外に存在していると想定される誘引因子(SDF1)によりブレブの方向性が示されていると仮説を立てており、その検証を進めていきたい。
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Research Products
(2 results)