2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H02446
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田村 宏治 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70261550)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 形態進化 / 形態形成 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「ある動物グループに固有かつ共通の転写調節配列が作用する形態形成メカニズムが、共有派生形質を生み出す」という概念を、新奇形質の獲得とその喪失さらに収斂という現象に対して実証していくことを目的とする。ある動物群に固有かつ共通の特徴的形態(共有派生形質)の創出には、その動物群に固有かつ共通のゲノム配列が関与していることが予想され、そのようなゲノム配列の獲得によってもたらされる遺伝子発現と形態形成メカニズムの変化が共有派生形質を生み出すことが想定される。このような仮説を実証するために、多数種の全ゲノム配列が利用可能で複数種の動物胚を入手できる鳥類を用い、比較ゲノム解析とRNAseqを併用して候補配列と遺伝子を絞り込み、複数の鳥類胚を用いて機能解析するという手法を用いたアプローチを試みている。 「鳥類が獲得した風切羽特異的Sim1発現の機能」に関しては、風切羽の形成と四肢の軸性形成との関係をSim1遺伝子の発現と機能を中心軸として解析を進めた。また、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP) より風切羽に変異のあるニワトリの胚を入手し、変異体胚におけるSim1遺伝子および軸性関連遺伝子の発現を解析した。「鳥類の中で収斂形態「水かき」を主導する転写調節配列の同定と解析」に関しては、48種の鳥類ゲノムを比較し、水かきをもつ9種の鳥類に高く保存されている配列を同定した。さらに、RNAseqの結果をもとにそれらの配列の近傍遺伝子に関して、水かきで機能している可能性のある候補遺伝子を絞り込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では3つの研究課題を掲げている。そのうち、課題1の「(獲得)鳥類が獲得した風切羽特異的Sim1発現の機能」に関しては、四肢の軸性形成(shh, Lmx1, Hoxa11/a13)とSim1発現、風切羽形成位置の関係の解析を終え、さらにニワトリ変異体を用いることで、Sim1遺伝子の風切羽形成に対する機能についてより深い考察を行うことができた。課題2の「(喪失)ペンギン類が喪失した「風切羽」とゲノム配列・遺伝子機能の喪失の関係」に関しては、ペンギン胚の入手が当初計画より遅れたものの、繰越期間に得られた胚を用いて基礎的なデータを得ることができた。課題3の「(収斂)鳥類の中で収斂形態「水かき」を主導する転写調節配列の同定と解析」に関しては、予備実験の比較ゲノム解析により検討した手法を用いて全ゲノム解析を行い、予定通り候補配列を取得するとともに、RNAseqデータを用いた絞り込みも順調に進んでいる。 以上の結果から、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はおおむね順調に進展しており、大きな変更点はない。 ただし、ペンギン胚の入手量が当初の計画よりも少なかったことから、ペンギン胚を用いた実験についてはニワトリやアヒルなど安定して胚を入手できる動物を用いて入念に予備実験を行ったうえで本番の実験を行い、試行回数が最小限ですむようにしたいと考えている。
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Research Products
(7 results)