2018 Fiscal Year Annual Research Report
モルフォゲンの分布とシグナル範囲を規定するヘパラン硫酸クラスターの解析
Project/Area Number |
18H02447
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
平良 眞規 中央大学, 理工学部, 共同研究員 (60150083)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヘパラン硫酸 / ヘパラン硫酸修飾酵素 / ヘパラン硫酸結合タンパク質 / ペプチド増殖因子 / アフリカツメガエル |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘパラン硫酸(HS)は多様な修飾パターンをもち、細胞表面で増殖因子などの分泌性タンパク質(モルフォゲン)と修飾パターン特異的に相互作用し、その分布やシグナル伝達に関わるとされているが、その分子基盤は不明な点が多い。我々はアフリカツメガエル(Xenopus laevis)胚を用いた解析で、修飾の異なる2種のHS(NAc-HSとNS-HS)が細胞表面にグリピカンをコアタンパク質としてそれぞれ独立のクラスターを形成して分布し、それぞれ異なる分泌性タンパク質の足場となることを明らかにした。HSはヘパランを前駆体とし、5種の修飾酵素により順次、NAc-HS(ヘパランと同等)からNS-HSを経て多様化していく。本研究の目的は、HSの特徴的な修飾パターンごとにクラスターが形成され、それぞれ異なる分泌性タンパク質と特異的に相互作用することを明らかにすることである。 これまでの成果は以下の通り。まずHSの5種類の修飾酵素(①Ndst、②Glce、③Hs2st、④Hs6st、⑤Hs3st)の全遺伝子をクローニングし、Xenopus胚に発現させる実験系を確立した。Ndst1はNS-HSクラスター数を増大させ、かつ細胞内への取り込みを増大させることは既に分かっていたが、さらにGlceを発現させるとNS-HSの細胞内への取り込みが抑制されることを見出し、修飾パターンとHSクラスターの動態との関係が示唆された。 次に特定の修飾パターンをもつHSに特異的に結合する既知のタンパク質としてFGF2とgDを準備した。gDはHSV1ウイルスのタンパク質で、その遺伝子は委託で人工合成した。それぞれ検出用のタグを付けたFGF2-mVenusとgD-HAの発現系を確立した。FGF2-mVenusを胚に発現させると細胞間隙にドット状に検出されたので、現在HS修飾酵素を発現させて結合の変化を検討中である。gD-HAタンパク質は細胞間隙に検出されなかったため、分泌されているか否かを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題が始まるH31年4月より、中央大学理工学部生命科学科組織構築学研究室に移動し、共同研究員として研究を続けることになったため、まずXenopus胚を用いた実験の準備に時間を要した。次に研究を遂行するための研究員の公募したが、応募者が少なくまた適任者がいなかっため、研究計画に大幅な遅れを生じてしまったが、平成30年12月から学生アルバイトを雇用し、平成31年2月から業務委託による博士研究者による実験が可能となり、同年(令和元年)8月から派遣社員を非常勤技術員として雇用することで、研究体制が整った。さらに同年10月から5ヶ月の短期ではあったが博士研究者を非常勤職員で雇用することで、遺伝子クローニングと遺伝子改変コンストラクトの作成が大きく前進した。しかし実験の過程で、NS-HSを特異的に認識する抗体のHepSS-1が不安定で3ヶ月ほどしか活性がもたないこと、そのため胚の染色にムラが生じるという問題が明らかになり、その対策に時間を費やした。さらに研究体制が整ってデータが出だした矢先、令和2年3月から新型コロナ禍により実験は完全に停止ししたことは大きな痛手となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策は、生じた問題点を改善し、予定していた実験の遂行を目指す。 (1)HepSS-1抗体の保存方法の検討。保存方法として(i)pHを上げる(pH7.8~8)、(ii)IgMの精製カラムを購入して精製する、を試みる。それぞれの処理、及びそれらを組合せた処理をした標品について、ndst1を4細胞期の1割球に発現させた胚を用いて免疫染色を行い抗体活性を検討する。 (2) FGF2-mVenusが結合するHSクラスターの同定。5種類のHS修飾酵素を組み合わせて胚に発現させ、FGF2-mVenusのHS結合特異性を検討する。それを明らかにした後、NAc-HSあるいはNS-HSに対する抗体で染色されるHSクラスターとFGF-mVenusが結合するHSクラスターとが独立して存在するかを検討することで、「HSの修飾パターンごとに異なるクラスターを形成する」という作業仮説を検証する。 (3) HSV-gDタンパク質の分泌性の検討と修飾HSの同定。gD mRNAを注入した割球由来の細胞にgDタンパク質は検出されたが、細胞間隙に分泌しているものは検出されなかった。可能性として、(i)予想に反してgDが分泌されていない、(ii)gDは分泌されているが結合する修飾パターンのHSが存在しない、が考えられた。gDが結合するHSには3OS(3位のスルフォン化)が必要であり、その修飾酵素のhs3st3の発現は神経胚以降であることから第2の可能性も十分あると考えている。まず分泌性を調べるため、gDにHAとmVenusの2つのタグを付けて1つの割球に発現させ、一方別割球に抗HA抗体を発現させてそこに結合するgDをGFP抗体で検出する方法をとる。もし分泌されていない場合は、分泌のためのシグナル配列をこれまで用いてきたTGFbのものに置き換えたコンストラクトを作成して検討する。gDが結合する修飾パターンのHSの同定は、FGF2-mVenusの場合と同様に、5種類のHS修飾酵素を組み合わせて胚に発現させて、gDのHS結合特異性を検討する。
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