2018 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞の低温感知部位の解明:低温センサー蛋白質フォトトロピンの細胞内局在
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18H02455
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
児玉 豊 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (00455213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陽川 憲 北見工業大学, 工学部, 助教 (60750908)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フォトトロピン / 温度センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
事前の実験として、異種細胞発現系を用いて、苔類ゼニゴケのフォトトロピン(PHOT)配列における細胞内局在性に関するアミノ酸を特定する実験を行ってきた。その結果、PHOT配列に変異を導入することによって、細胞質のみに局在するPHOT(細胞質型PHOT)の作製に成功した(未発表)。細胞質型PHOTは、アミノ酸欠失実験によって関与するアミノ酸配列を絞っていき、最終的にはアミノ酸置換によって作製に成功した。 2018年度には、細胞質型PHOTに黄色蛍光タンパク質(Citrine)を融合させた細胞質型PHOT-Citrineをアガートラップ法(アグロバクテリウムを用いた簡便なゼニゴケ形質転換法)によってphot変異体ゼニゴケに発現させた。その結果、ゼニゴケの無性芽細胞において、Citrine蛍光は、細胞質のみで確認された。細胞膜、葉緑体周囲、ゴルジ体ではCitrine蛍光を確認できなかった。また、細胞質型PHOT-Citrineを発現するゼニゴケ無性芽細胞における葉緑体運動を微光束照射装置を付加した温度制御顕微鏡を用いて解析した。その結果、細胞質型PHOTは、低温を感知することができず、葉緑体の寒冷逃避反応を誘導できないことがわかった。つまり、細胞質は、葉緑体の寒冷逃避反応を誘導するために必要な低温感知に関わらない細胞画分であることが明らかになった。さらに、細胞質型PHOTは、葉緑体の逃避反応も誘導できなかった。この研究過程で、アガートラップ法の改良版を開発した。 また、細胞質型の作製と同様の実験戦略によって、細胞膜型、葉緑体周囲型、ゴルジ体型のPHOTの作製を試みたがあまり上手くいっていない。そこで、2018年度の途中から、代替実験も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞質型PHOTの解析だけでなく、細胞膜型、葉緑体周囲型、ゴルジ体型のPHOTの作製を計画通りに進めている。また、ゼニゴケ形質転換技術のアガートラップ法の改良版も開発し、研究の進展に寄与した。さらに、葉緑体の寒冷逃避反応の制御において、細胞質が低温感知に関わらない細胞内画分であることを既に明らかにしており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も計画通りに実験を行っていくが、細胞膜型、葉緑体周囲型、ゴルジ体型のPHOTの作製については、平成30年度に代替案も開始したため、平成31年度からは、代替案を組み込んで計画を進めていく。
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