2018 Fiscal Year Annual Research Report
性差と高次生理機能:新規細胞膜上女性ステロイドホルモン受容体の生理病態機能解析
Project/Area Number |
18H02472
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
木村 郁夫 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80433689)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロゲステロン / GPCR / 性ステロイドホルモン受容体 / MAPR / mPR |
Outline of Annual Research Achievements |
性ステロイドホルモンは性機能への関与だけではなく、母性行動、攻撃行動や情動、摂食、リズム、睡眠、そして記憶や学習を含む高次脳機能に至るまでの多彩な機能に関与していることが明らかになってきた。これら機能には、核内受容体を介した長期的な遺伝子発現変化では説明のできない即時性の反応が多数関与しており、そのメカニズムは未だ不明である。本研究課題は、近年発見されたプロゲステロンの細胞膜上受容体のmPRおよびMAPRファミリーに着目し、性ステロイドホルモンの即時的反応の解明とそれに基づく生体機能調節機構の発見を目的とする。 mPRの脂肪組織におけるエネルギー代謝への影響に関して、昨年度の脂肪組織に高発現するmPRKOマウスのエネルギー代謝における検討の結果、このmPRKOマウスは雌雄で異なった糖代謝に関連する表現型を示すことがわかった。特にプロゲステロン刺激により、GPCRシグナルとは異なるシグナル経路を介して耐糖能に影響を与える可能性が、KOマウスを用いたin vivo解析と、mPR安定発現細胞によるin vitro解析により示唆された。また、高脂肪食長期投与による肥満誘導の結果、このmPRKOマウスは野生型マウスと比較し、体脂肪重量の増加に異常をきたすことがわかった。引き続き、このKOマウスの代謝異常の要因とプロゲステロンの関係の詳細な検討を進めていく。また、mPRの神経内分泌への影響として、脳特異的に発現するmPRに関し、さらに詳細な発現部位の解析を行ったところ、特定ニューロンに発現していることがわかったため、そのニューロンが有する機能を指標にして、mPRKOマウスの神経内分泌における表現型の特定と、その機能解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において、全てのmPR関連遺伝子欠損マウスの作成が完了した。また、そのうちのいくつかでエネルギー代謝異常を伴う表現型が確認できた。したがって、本研究課題は現状、順調にその研究計画を進行できていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
mPRの脂肪組織における役割に関しては、昨年度観察されたmPRKOマウスの表現型をもとに、エネルギー代謝におけるmPRの分子メカニズムに関して、更なる検討を行う。 mPRの神経内分泌への影響に関しては、昨年度確認できた脳特異的に発現するmPRについて神経機能に焦点を当て、その表現型を調べる必要がある。 mPRの母子間シグナル伝達機能への影響に関しては、関与が予想されるmPRに関する新たに作成が完了したKOマウスを用いて、今年度から本格的にその表現型について検討を進める。 以上より、今後は特にKOマウスの表現型に焦点を絞り、分子レベルの機能解析を中心に進めていく必要があると考えられる。
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Research Products
(6 results)