2018 Fiscal Year Annual Research Report
機能未知光受容タンパク質に着目した脊椎動物の脳内光受容とその多様性の解明
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18H02482
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小柳 光正 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30379276)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光生物 / 眼外光受容 / ロドプシン / 脳 / GPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、多様な動物の脳において、光受容タンパク質様遺伝子が発現していることが報告され、動物の脳における未知の光利用の可能性に注目が集まっている。しかしながら、それらの遺伝子が真に光受容体として機能する証拠がなかったために、脳内光受容が関わる生理機能の解析は立ち遅れていた。近年私たちは、昆虫や脊椎動物(魚類、鳥類)において、同遺伝子産物が光受容体として機能することを明らかにした。 そこで本研究では、脊椎動物の機能未知脳内光受容に関して、分子・神経基盤および生理的役割の解明とそれらの進化・多様性を明らかにすることを目指し、脳内光受容タンパク質を起点とした研究を展開している。その結果、平成30年度は以下の研究成果を得た。
・駆動するシグナル伝達系が不明であった魚類の脳内光受容タンパク質について、脳内光受容タンパク質を発現させた培養細胞において、シグナル伝達分子の過剰発現・破壊・機能阻害を行い、魚類の脳内光受容タンパク質が、ある特定のGタンパク質を介したシグナル伝達系を光依存的に駆動することを示唆する結果を得た。 ・RNA-seqence解析により、哺乳類の脳において、脳内光受容タンパク質が強く発現している領域を同定した。 ・下等脊椎動物は、脳の一部である松果体で光の波長(UV光と可視光の比率)を識別していることが知られており、私たちは松果体特異的なUV光受容タンパク質(パラピノプシン)を起点として、遺伝子改変ゼブラフィッシュとカルシウムイメージングを組み合わせた解析を行った。その結果、パラピノプシンは、UV光受容タンパク質として神経活動の抑制に関わるだけでなく、可視光受容タンパク質として神経活動の促進にも関わることが明らかとなり、「単一光受容タンパク質による波長識別」という波長識別の新しいメカニズムを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤となる脳内光受容タンパク質の分子機能の解析は着実に進んでおり、生体内分布の解析のための準備も順調に進んでいる。また、松果体で行われる波長識別の分子基盤の解析では、新規のメカニズムを明らかにするなど、十分な成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに、脳内光受容タンパク質の分子機能の解析を進め、生体内機能の解析へと展開したい。また、脳内光受容の多様性と進化を理解するために、他生物の研究も積極的に進めたい。
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