2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of molecular mechanisms that brought about positional diversity of the hindlimb in tetrapod
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18H02487
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 孝幸 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (40451629)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脊椎骨 / 後肢 / 前後軸 / 多様性 / エンハンサー / 非モデル動物 / 進化 / 進化発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度の研究で明らかとなったマウス胚、ニワトリ胚、スッポン胚、シマヘビ胚におけるGdf11遺伝子の中軸中胚葉におけるエンハンサー候補領域の生物学的特性を調べた。ニワトリ胚に電気穿孔法を用いてエンハンサー候補領域にレポーター遺伝子を連結させたコンストラクトを導入する作業を行っていた時に、胚に注入したDNAを可視化するためこれまで発生生物学者が用いて来たファストグリーンという色素が赤色の自家蛍光を発することを発見した。興味深いことに、ファストグリーンは水溶液の状態では蛍光を発しないが、ニワトリ胚の中にその水溶液を注入すると生体と反応し、赤色の蛍光を発することを検証実験により明らかにした。この発見は、これまでニワトリ胚にファストグリーンを用いて遺伝子を導入し、赤色蛍光タンパク質を用いて細胞を可視化する実験を行っていた研究者に大きな警鐘を与える発見であった。そこでエンハンサー活性を定量的に解析する方法を構築するためにファストグリーンに代替するDNAを可視化するための色素を独自に探索し、最終的にブリリアントブルーという青色の色素を用いると自家蛍光なくレポーター遺伝子の蛍光輝度値を高感度に定量的に評価出来ることが分かった。この実験方法をまとめて論文に報告した(Saito et al., 2019)。また輝度値の計算にはこれまでの発生生物学分野の手法では導入が遅れていた、蛍光のデジタル画像をImageJを用いて反自動システムにより客観的にレポーターの輝度値を算出する手法を構築し報告した。またGdf11が発現する中軸中胚葉の細胞のlinage traceを行うために用いるEGFPを全身に発現するトランスジェニックニワトリの組織ごとの蛍光強度を測定した論文も発表した(Tsujino et al., 2019)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ATAC-seqのデータ解析を進めている。スッポン胚のATAC-seqのデータはこれまでNCBIに登録されている全ゲノムをリファレンスにして貼付け作業を行ったが、ゲノムのデータが不完全でATAC-seqの結果得られたリードで貼付けられないものが多数存在することが分かった。そこで、ミドリガメやウミガメのゲノムをリファレンスにした所、コーディング領域以外のノンコーディング領域にもATAC-seqのリードが効率よく貼付けられることが分かった。この結果を用いてスッポンのGdf11遺伝子周辺の配列を調べた結果、マウスには存在しないスッポン特異的なオープンクロマチン領域を同定することに成功した。またニワトリ胚から得られた結果を赤色野鶏のゲノムに貼付けた所、同様にニワトリ特異的なオープンクロマチンの領域を同定することに成功した。シマヘビ胚から得られたデータはシマヘビのゲノムがまだ解読されていないため、台湾ハブとコーンスネークのゲノムに貼付けを行った。その結果、シマヘビと系統的に近いことが予想された台湾ハブのゲノムも多くが断片化されて繋がってない領域があり、シマヘビのATAC-seqのデータも貼り付かない配列が多く存在した。Gd11遺伝子座周辺もピークは観察されるがゲノムが断片化していたためGdf11遺伝子からどの程度離れている場所なのか正確には分からなかった。このことから、シマヘビのゲノムをリファレンスとしてATAC-seqのデータを再解析する必要があることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
シマヘビ胚のATAC-seqの結果を台湾ハブに貼付けた結果から、シマヘビ自体のゲノムをリファレンスとしてATAC-seqの結果を再解析する必要があることが分かった。そこで今後はシマヘビのゲノムをde novoで次世代シークエンサーを用いて配列を同定し、独自に得られたシマヘビゲノムのデータを利用してGdf11の遺伝子座周辺のオープンクロマチン領域を推定していく予定である。また、シマヘビ胚以外のマウス、ニワトリ、スッポンのそれぞれの胚から得られたATAC-seqのデータより各種に特異的なGdf11遺伝子のエンハンサー候補領域が複数推定された。今後は、これらの配列の下流にEGFPを挿入し、まずはニワトリ胚への電気穿孔法を用いてGdf11 が発現する中軸中胚葉の領域においてこれらの配列がエンハンサー活性を所持しているのかを明らかにする。マウスのエンハンサー候補配列でエンハンサー活性が見られた配列についてはエンハンサー候補配列の標的遺伝子破壊マウスを作成し、Gdf11の中軸中胚葉での発現量、もしくは発現のタイミングが遅くなるかどうかをqPCR を用いて解析する。またエンハンサー候補領域のホモ接合体の胚を採取し、骨染色を用いて後肢が接続している仙椎の位置を観察する。Gdf11遺伝子の発現量や発現のタイミングが遅くなっていれば、仙椎の位置が体の後側にずれることが期待される。これによりエンハンサー候補配列のin vivoにおける必要性を検証する。また今後は、スッポン胚やシマヘビ胚を用いてGdf11遺伝子のエンハンサー活性を調べて行く必要がある。スッポンやシマヘビは7月にしか産卵しないため、研究室内で1年中研究することは現在出来ない。そこで今後はスッポン胚、シマヘビ胚より繊維芽細胞を単離し、この細胞を用いてスッポン、シマヘビのiPS細胞を樹立することを試みる。
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Research Products
(11 results)