2019 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトとの共進化を支えたイヌの社会認知能力に関わる遺伝基盤の解明
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18H02489
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
永澤 美保 麻布大学, 獣医学部, 講師 (70533082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久世 明香 麻布大学, 獣医学部, 講師 (00507882)
茂木 一孝 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (50347308)
今村 拓也 九州大学, 医学研究院, 准教授 (90390682)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イヌ / 遺伝子 / 社会的認知能力 / 犬種差 |
Outline of Annual Research Achievements |
行動実験では、おなじ柴犬という犬種グループ内でも、解決不可能な課題に直面した際にヒトを見る行動にはばらつきが見られた。関連解析では、柴犬において解決不可能な課題に直面した際にヒトを見る行動と有意に関連するSNPを発見した。行動を引き起こしている遺伝子は特に脳で発現しているものや神経系に関連しているものだと考えられる。SNPの付近には、神経系や脳で発現している遺伝子がいくつか見られた。 たとえば遺伝子Aは主に脳で発現し、中枢神経系で濃縮され、皮質の発達、神経幹細胞の増殖、小胞の輸送を媒介することが示されている。また、脳以外にも視床下部、下垂体、副腎で遺伝子Aの発現が確認されている。視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸は、恒常性を維持し、身体的または感情的なストレスを管理するために不可欠である。遺伝子Aのタンパク質は、細胞の増殖と分化の調節因子であるMAPKシグナル伝達の膜関連サプレッサーである。マウスでの遺伝子Aの破壊を行ったことにより、HPA軸による体の恒常性の調節因子であることが明らかとなった。また、遺伝子Aの欠乏が視床-扁桃体に影響し、強迫性障害(OCD)のような表現型を引き起こしていることも明らかとなっている。OCDは不合理な行為や思考を自分の意に反して反復してしまう精神障害の一種である。遺伝子Aの欠乏により、マウスにおいて過剰で病的な自己グルーミングを引き起こすこと示された。また、同時に不安の増加が見られた。緒言で述べたキツネの家畜化実験では、ストレスホルモンであるコルチゾールの血中濃度の低下やHPA軸の活性の低下が見られている。このことより、遺伝子Aはイヌの進化・家畜化に関連している可能性があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に大きな問題はなく、関連遺伝子候補も見出され、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
同定した候補遺伝子をこれまで構築したイヌ行動遺伝子データベースでタイピングし、関連性を確認する。
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Research Products
(16 results)