2019 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムに残されたデモグラフィー情報の比較解析で探る生物多様性の環境変動応答
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18H02496
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井鷺 裕司 京都大学, 農学研究科, 教授 (50325130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
伊津野 彩子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (80816249)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 新規ゲノム解読 / 隠蔽種 / 比較デモグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2019年8月と2020年1月に、現地でゲノム解読及び集団解析用の試料採集を行った。昨年度行ったO. balansaeの新規ゲノム解読については、継続的に改善を試み、ゲノムアセンブルをNECAT、エラー修正をRacon及びPilonで行った結果、N50値は 0,5Mbpから1.11 Mbpと改善された。また、本ゲノム情報を参照ゲノムとして用い、O. baladica, O. balansae, O. sulfurea, O. pulchella, O. morierei, O. subverticillata, O. palmatinervia, O. ovata, O. oblongifolia, O. doubetiae, O. pancheri, O. longifoliaの計12種についてPSMCを行う事で、過去数百万年の個体群動態の復元に成功した。これらの集群の個体群動態と種分化のタイミングについて興味深いパターンを見出すことができた。 集団解析としては、O. balladica、O. dubedtiae、O. microcaryxの3種について予定通りゲノム縮約解読を行い、現存する個体群の遺伝的多様性、個体群間の遺伝的分化、分類群間の系統関係を明らかにした。また、昨年度に発見した広義のO. palmatiberviaにおける隠蔽種の可能性について、さらに詳しい解析を行った。その結果、遺伝的分化程度及び、推定された分岐年代からも、これらには別種レベルの遺伝的違いがあることが示され、このことはITS2の変異情報とも矛盾しなかった。これらの結果を踏まえた外部形態観察の結果、2系統は花形質(花冠,雄蕊・雌蕊の長さ)及び葉柄上の皮目の有無によって明瞭に区別できることが分かったので、本研究により初めて発見された隠蔽種であると結論付け、新種として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた以上に解析が進み、12種のOxera属植物についてPSMCによる過去の個体群動態の復元に成功した。当初計画していたゲノム縮約解読3種を予定通り進捗させたことに加え、本研究の解析によって、これまで知られていなかった隠蔽種を発見することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
PSMCによる個体群動態の復元については更に対象種数を増やし、多様な生活史戦略を持ち多様な生育地に分布する分類群についても解析を進める。またゲノム解読については国立遺伝学研究所の「先進ゲノム支援」プロジェクトによって解読品質の向上をめざす。
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Research Products
(8 results)