2019 Fiscal Year Annual Research Report
植物の成長に伴い菌根菌は変わる―植物の生活史段階による菌共生パターン多様化の解明
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18H02500
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
遊川 知久 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, グループ長 (50280524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大和 政秀 千葉大学, 教育学部, 教授 (00571788)
辻田 有紀 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80522523)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 菌根 / 進化 / 植物 / 共生 / 生活史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,野外実験と器内の共生培養実験を組み合わせたアプローチによって,植物が生活史のどの段階でいかに菌根菌を変化させるかを明らかにするとともに,菌共生パターン変化の適応的意義と進化過程を解明することを目的とする。 本年度は,ラン科クゲヌマラン(Cephalanthera longifolia (L.) Fritsch)の種子発芽とその後の成長に関わる菌根菌の解明ならびに,本種の急速な分布拡大と菌根共生との関連の解明をめざす研究を中心に実施した。クゲヌマランの種子を入れた袋を地中に埋設し,6~37ヶ月後に回収して,得られた実生を8つの成長段階に区分した。菌が感染した組織からDNAを抽出し,nrDNA ITS領域の塩基配列情報を用いて菌の種類を特定した。その結果,菌の塩基配列はイボタケ科(担子菌門)の3グループに区分され,そのうち2グループで90%を占めた。また,実生のいずれの成長段階においても,これら2グループが優占するとともに,種子を埋設した土壌深度や播種地点に関わらず検出された。クゲヌマランの成熟個体においては,イボタケ科に加え他の科の菌も検出された。以上から,特定のイボタケ科の種が,クゲヌマランの種子発芽とその後の成長に重要な役割を果たしていることと,成長に伴い共生する菌根菌の多様性が高くなることが示唆された。また本種の急速な分布拡大には,すべての成長段階で共生する特定のイボタケ科が寄与している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプル収集、データ解析ともに概ね予定通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りに実施するが、昨年度までの解析結果の取りまとめにより注力する予定である。
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