2019 Fiscal Year Annual Research Report
交尾受容性の進化メカニズムから解き明かす普遍的な性的対立
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18H02507
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 隆嗣 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (70301223)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Drosophila prolongata / 交尾頻度 / 交尾受容性 |
Outline of Annual Research Achievements |
・オスの新規求愛行動獲得に起因する配偶システムの進化 動物のメスは異なるオスと複数回の交尾を行うこと(多婚性)が一般的であるが、ある種のメスは生涯にただ一度の交尾しか行わない(単婚性)。このような配偶システムの違いがどのように進化するのか、その直接的なメカニズムについてはほとんど分かっていない。本研究で用いるテナガショウジョウバエのオスはLeg vibrationという特殊な求愛行動を行う。Leg vibrationは既交尾メスの再交尾受容性を高める効果があるが、未交尾メスとの交尾には必ずしも必要ない。我々は、Leg vibrationができないような処置を施したオスは既交尾メスと再交尾することができないことを発見した。この「再交尾抑制」は2週間以上続き、メスはLeg vibrationしないオスとは生涯再交尾しないと考えられた。Leg vibrationを行わない近縁種のメスも再交尾率は極めて低かった。これらを総合すると、そ選手において何らかの原因でメスの再交尾抑制が強まり(単婚性)、それを打破するためにLeg vibrationという新しい求愛行動が進化して複数回交尾(多婚性)に戻ったというシナリオが考えられる。 ・空腹状態とエサの有無による交尾受容性の亢進 一般的に、空腹状態はメスのエサ探索行動を亢進させるため、交尾受容性を下げる効果があると考えられている。しかし、テナガショウジョウバエでは絶食処理を施した方が交尾率が上がることが経験的に知られていた。我々は(1)絶食はオスの交尾率を下げ、メスの交尾率を上げること、(2)空腹状態のメスはエサの存在下で交尾率が上がるが、エサが存在しないとむしろ交尾率が下がること、を明らかにした。以上の結果は交尾受容性の決定要因として、これまで見過ごされてきた空腹状態とエサの有無との相互作用の重要性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナによる影響で繰越となったが、最終的には十分に成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き当初計画に従い研究を進める。
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