2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ecological effect of genome controlling animal movement which affects to individual fitness and population
Project/Area Number |
18H02510
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮竹 貴久 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (80332790)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 謙 玉川大学, 農学部, 教授 (40387353)
富岡 憲治 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30136163)
三浦 一芸 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, グループ長 (10355133)
内山 博允 東京農業大学, その他部局等, 研究員 (70747295) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 動き / 活動量 / チロシン代謝系 / RNAi / 不動行動 / 系統推定 / 遺伝的構造 / ドーパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
対捕食者戦略でもある動きを支配する行動形質である死にまね行動について分子レベルでの解析を行った。我々は、コクヌストモドキの死にまね持続時間の長さに対して20世代以上の分断選択を施した。本研究では、死にまね時間の異なる系統間でRNA-seq解析を行い、網羅的に発現遺伝子に関する比較を行った。その結果、ドーパミンの前駆体であるチロシンの代謝パスウェイに関連する複数の遺伝子において系統間で有意に発現量が異なった。そのため本報告では、系統間で発現の異なるチロシン代謝系の酵素遺伝子の相対発現量についてもqPCR解析を行った。その結果、死にまね持続時間にはドーパミンの供給に関する酵素の関与が示唆された。リアルタイムPCRで発現量の差が2倍以上であったドーパミン代謝系遺伝子についてRNAiを行った。死にまね時間の長い系統の成虫よりRNAを摘出し、逆転写によりcDNAを合成し、LinearDNAを作成した。それによって合成したdsRNAを死にまね時間の長い系統の終齢幼虫にインジェクションした。Vermilion遺伝子も同量インジェクションし、コントロールとした。リアルタイムPCRの結果、dsHPDのインジェクションによって、HPDの発現量が半分以下に抑制されていたが、成虫の死にまね持続時間に変化は見られず、ノックダウンによる効果は認められなかった。また日本全国に設置されているコイン精米機(30か所以上)より、野生のコクヌストモドキ成虫をサンプリングして飼育し、死にまね持続時間およぶ活動量を計測したところ、これらの形質には大きな行動の表現型変異が見られることがわかった。そこで、これら行動形質に地域集団間変異の見られるコクヌストモドキの、ミトコンドリア遺伝子による系統関係を推定した。遺伝的構造(SSR、Fst)を調べたところ、系統間に著しい差は認められず遺伝的分化は大きくないことが予測された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動きの異なる系統間でのトランスクリプトーム解析を行い、原因遺伝子の候補が明らかとなり、コクヌストモドキでのRNAi法の妥当性を検証できた。さらに系統推定法も検証できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
①生態学調査としては、全国から採集したコクヌストモドキの核領域のマイクロサテライト座を用いた系統間推定と、推定した系統関係と、歩行活動量、死にまね頻度・時間、交尾行動の行動形質との関連について解析を進める。②機能の解析としては、系統を交雑させ表現型を分離させたF2集団についてDNAをバルク化して全ゲノムシークエンシングを行う。作成したバルクDNAでSNPの発現インデックスを解析するQTL-seq法を行い、死にまね・歩行活動量など行動形質を制御する遺伝子領域を特定する。さらにRNA干渉実験を進め、これら候補遺伝子が「動き」に関わる標的遺伝子であることを確認する。今年度では、RNA干渉法は確立したが、インジェクションによる効果が認められなかった。この理由として、候補遺伝子が量的形質である可能性と、幼虫でインジェクションしたが成虫の行動を調査したために、インジェクションしたdsRNAがその間に体内で消失した可能性が考えられる。そのため今年度は、幼虫にインジェクションして幼虫の不動行動を計測、あるいは成虫へのインジェクションを試みる。また複数の遺伝子を同時にインジェクションする手法も検討する。③行動進化生態学的解析としては、捕食者存在下におけるコクヌストモドキの反応と、コクヌストモドキの動きに対する捕食者の反応について解析を進める方策である。
|
Research Products
(11 results)