2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H02512
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
北條 賢 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (70722122)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 相利共生 / 社会性昆虫 / 行動操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
相利共生は自然生態系において広く見られる一般的な現象であるが、生物種間の協力関係がどのように維持されているのか、そのメカニズムは不明な点が多い。本研究は相利共生関係の実態をパートナーによる行動操作という観点から捉え直すことを目的として、(A)アリの行動を操作する化学物質の同定、(B)行動操作に関わる遺伝子および神経回路の特定、(C)シジミチョウによる行動操作がアリの適応度に与える影響の3つの実験を行っている。 (A)昨年度までにシジミチョウの蜜には糖・アミノ酸・ペプチドなどが含まれ、アリが蜜を摂食することで行動が変化することを示してきた。今年度は行動操作を引き起こす活性成分を絞り込むための、簡便な生物検定法の確立を試みた。その結果、蜜の摂食量とアリの行動量を自動的に計測できる実験装置を開発することができた。 (B)アリ脳のトランスクリプトーム解析より、蜜を摂食したアリ脳の遺伝子発現パターンは、蜜を摂食していないアリとは大きく異なった。このことから蜜を摂食することで多数の遺伝子が特異的に発現変動することがわかった。また、蜜摂食によって発現が変動した遺伝子群には、細胞の組織構造や神経発生のプロセスに関わる遺伝子が多く含まれていた。次年度は発現変動遺伝子の脳内局在を調べ、行動操作に関わる脳領域を探索する。 (C)シジミチョウとの共生から得られる利益は、アリの栄養状態によって異なることがわかった。炭水化物が豊富な状態において、シジミチョウとの共生はアリに利益をもたらした。タンパク質が豊富な状態においては共生関係により次世代生産数が低下し、共生関係はアリにとってコストになることが示された。しかしながらシジミチョウへの随伴行動はタンパク質が豊富な状態において最も活発であった。次年度は各栄養条件下におけるアリの採餌行動を定量的に調べ、共生から得られる利益が変動する要因を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの実験計画のうち、2つ(B,C)は当初の予定どおり進んでおり、期待していた以上の興味深い成果が得られている。実験計画(A)については手法の確立に時間を要したため目に見える成果は得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画B, Cに関しては研究のコアとなる重要な知見を得ることができた。次年度はその結論をサポートするための実験を進めるとともに、原著論文の執筆・投稿を行う。計画Aに関しては実験手法を概ね確立できたため、その手法を活かして目的達成のための実験を集中的におこなっていく。
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Research Products
(9 results)