2019 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類中枢シナプス伝達・短期可塑性メカニズムの解明
Project/Area Number |
18H02530
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
坂場 武史 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (80609511)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の研究をおこない、一部研究は論文として公刊した。 (1)げっ歯類海馬苔状線維シナプス前終末の伝達物質放出とエンドサイトーシスの時間経過の詳細な解析(Miyano et al., 2019)。この研究では海馬急性スライス標本で苔状線維シナプス前終末に直接パッチクランプ記録を行い、膜容量測定法を用いることでCa-伝達物質放出連関を定量的に測定した。Ca流入に対して、伝達物質放出は非常に遅いものであること、Caバッファに対する感受性が非常に強いこと、伝達物質放出可能シナプス小胞プールの枯渇後の小胞動員がCa非依存性であることがわかった。さらに、開口放出後のエンドサイトーシスがCa非依存性である可能性を指摘した、これらの特性はcalyx of Heldシナプスなどとは異なり、海馬苔状線維特なものであることが示唆された。 (2)海馬苔状線維シナプスのCa依存性の解析。海馬苔状線維-CA3錐体細胞から同時記録をおこない、ケイジドCaと蛍光Ca指示薬をシナプス前終末に導入した。紫外光を照射することでケイジドCaを解離し、伝達物質放出のCa依存性をシナプス後細胞のEPSC測定、あるいはシナプス前膜の膜容量測定法を用いて直接的に計測した。実験難度が高いものの、技術的にCa依存性の実測が可能であり、論文としてとりまとめている。この実験方法を用いて、特に短期シナプス可塑性のCa依存性を来年度以降、直接的に計測できるシステムを構築できた。 (3)このほかに下丘シナプスの短期可塑性を調べ、発達の途上、とくに聴覚獲得前後で、下丘への興奮性入力シナプスにおける短期シナプス可塑性が変化する可能性が指摘された(Kitagawa and Sakaba, 2019)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
苔状線維-CA3シナプスにおけるケイジドCaを用いたCa-伝達物質放出連関の測定は技術的に非常に困難であり、実現できたのは予想以上であった。これによって、calyx of Heldシナプスなどと同様に可塑性メカニズムを定量的に解析する方法が開けた。
|
Strategy for Future Research Activity |
ケイジドCaを用いた実験を公刊すべく取りまとめを進めるとともに、この方法論を活用して、シナプス前性可塑性メカニズムの解明を早急に進める。
|
Research Products
(5 results)