2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18H02541
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
久場 博司 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10362469)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 聴覚 / 神経回路 / 神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
音の時間情報を幅広い周波数域で正確に処理することは、聴覚の機能発現に不可欠である。ニワトリ脳幹の蝸牛神経核では、興奮性シナプス入力の数やサイズ、イオンチャネルの発現が神経核内で周波数域毎に異なり、このことにより各周波数域での正確な時間情報処理が可能になる。この機能分化には聴覚入力が関わると考えられるが、そのしくみは明らかでない。従って、本研究では上記神経核での周波数域依存的な機能分化の詳細と形成過程、さらにその分子機構を明らかにすることを目的としている。 チャネル分布再編の活動依存性には周波数域特異性がある。従って、その分子機構を明らかにするために、各周波数域の細胞からmRNAを抽出し、その発現プロファイルをRNA-seqにより比較解析することを行っており、本年度も継続した。一方、上記神経核の神経細胞は、聴神経から興奮性入力と多シナプス性のフィードフォーワード抑制入力を受ける。従って、本年度は、この興奮・抑制回路が保存された脳ブロック標本を開発し、ブラインドホールセルパッチ記録法を用いて、聴神経刺激に対する神経細胞応答と興奮・抑制シナプス入力の刺激強度依存性についても解析した。その結果、高周波数域では興奮入力が抑制入力に比べて強く、刺激強度の増加に伴って神経細胞応答が容易に飽和するため、応答域が狭くなるのに対して、低周波数域では興奮入力と抑制入力が釣り合うことで細胞応答の飽和が抑えられるため、幅広い応答域が実現されていることを明らかにした。すなわち、上記神経核では、興奮と抑制のシナプス強度が周波数域毎に最適化されることで、様々な周波数と強さの音に対する情報処理が実現されていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脳切片からSMART-seq解析に用いる試料(RNA)を採取する過程で、当初の想定に反し、脳切片では髄鞘化が顕著なため顕微鏡下で確認できる細胞の数が少なく、得られる試料が予定よりも遥かに微量となり、十分量を確保するには個体数を大幅に増やす必要があることが判明したため。
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Strategy for Future Research Activity |
切片培養標本を用いて、薬理阻害によりチャネルの分布再編の分子経路のスクリーニングを行なう。同時に、RNAseqにより同定されたチャネルの分布再編に関わる候補分子の関与について、ノックダウンや過剰発現による検証を行う。また、低音域での興奮入力と抑制入力のバランスを制御しているシナプス基盤についても検討を行う。
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