2020 Fiscal Year Annual Research Report
脱芳香化・再芳香化を活用した革新的有機合成法の開発と展開
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18H02550
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
根本 哲宏 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80361450)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脱芳香化 / 遷移金属触媒反応 / インドール / ベンゾフラン |
Outline of Annual Research Achievements |
3年度目の研究成果は以下の通りまとめることができる。銀カルベンを用いる脱芳香化反応に関しては、beta-ナフトール類の非典型的脱芳香族的変換反応として、フェノール性水酸基のないベンゼン環上での分子内脱芳香化反応に成功した。求核剤としてインドールを用いた際に本反応により得られる生成物は、フッ素アニオンセンサーとしての利用が可能であった。また、ジアゾフリー銀カルベン発生法の開発に成功し、活性化されていないベンゼン誘導体の不斉ブフナー反応に続く環化付加反応に展開することで、高度に官能基化されたヘテロ環分子の合成法を確立した。 3,4位中員環縮環インドール類の合成法としては、3位にエノンユニットを持つインドール誘導体に対して、Rh(III)触媒を用いるインドール4位へのジアゾマロネート誘導体のC-H挿入反応に続く分子内共役付加反応を行うことで、短工程で3,4位中員環縮環インドール骨格を合成する手法を開発した。本反応はキラルチオウレア触媒を2工程目に用いることで不斉合成にも展開可能であった。 天然物合成研究としては、ドラグマシジンEの合成研究を進め、2連続不斉中心の構築法を確立した。また、マリバトールAをはじめとしたレスベラトロールダイマーの合成を検討し、いくつかの天然物の合成ルートを確立した。天然物合成の新しいコンセプトとして、生合成経路を計算化学的に検証し、合成ルートの設計や立体化学の検証に生かす取り組みをスタートし、本天然物群の合成ルート確立により有効性は検証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、概ね順調に進んでいる。その理由は以下の通りとなる。 当初目標の一つとしていた、アルキンとキノリンオキシドと銀触媒からカルベン種を発生させるジアゾフリー合成法を確立し、不斉脱芳香化反応への幅広い展開が実現できていること。 本研究の標的骨格としていた3,4位中員環縮環インドール類の合成法として、方法論開発、天然物合成の両面で進展が見られていること。 インドールの酸素類縁体となるベンゾフラン誘導体の合成研究に関しても、当初の目標としていたマリバトール類の合成に成功し、関連天然物の合成にも展開できていること。
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Strategy for Future Research Activity |
銀カルベンが関連する反応のさらなる展開に加え、その他の金属カルベンを用いる新しい触媒反応を開発する。 マリバトール類の合成にて有効性を確認した、生合成の計算化学的検証を基盤とする天然物合成に関して、適用範囲の拡大を模索し、新規合成コンセプトとして確立する。
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