2019 Fiscal Year Annual Research Report
Florine chemistry: Challenges and solutions
Project/Area Number |
18H02553
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
柴田 哲男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40293302)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トリフルオロメトキシ基 / ジフルオロメトキシ基 / フルオロホルミル基 / トリフルオロメチル基 / 不斉合成 / ペンタフルオロスルファニル基 / ジフルオロメチル化 / トリフルオロエチル基 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い,初年度の成果をもとに,新たにトリフルオロメトキシアニオンを発生させる試薬として,トリフルオロメトキシ基をもつピリジンを合成した。合成した試薬に対してフッ素アニオンを作用させ,臭化ベンジル類と反応させることで,トリフルオロメトキシ化反応が進行することを観察した。収率および汎用性に関して精査しているところである。一方,ジフルオロメトキシ基をもつピリジンを合成し,直接的ジフルオロメトキシ化を検討したところ,発生したジフルオロメチルアニオンを安定化させることが出来ず,フッ化物イオンとフッ化ホルミルに分解した。ところが,条件を精査するうちに,このフッ化ホルミルが発生したフッ化物イオンが触媒となり,さらにパラジウム触媒存在下,ヨウ化アリールとカップリング反応が起こることを発見した。生じるアリールフルオロホルミル化物は医薬農薬,機能性材料などの重要な合成素子として知られており,当該知見はきわめて重要な発見である。この反応の汎用性は高く,様々なヨウ化アリール類に加え,ヨウ化ビニルにも適応可能であることがわかった。特筆すべきは,医薬品など多様な官能基や複素環が存在しても首尾よく進行する点である。中程度から高収率で目的のフルオロホルミル体を得ることに成功した。得られたフルオロホルミル体は,アミド,エステル,ケトンに変換出来た。 また,トリフルオロメチルアニオンを嵩高いP4塩基にて安定化させる方法論を拡張し,アミノ酸由来のスルフィニルイミンと反応させる不斉トリフルオロメチル化反応を検討した。その結果,連続した2つの不斉点を持つトリフルオロメチル基を持つジアミノ体が,立体選択的に高収率で得られることがわかった。さらに,分子内にマイケル受容体を併せ持つスルフィニルイミンではタンデム型環化によってトリフルオロメチル基を有するイソインドリンの立体選択的合成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の成果を発展させて,ジフルオロメトキシピリジンを用いたジフルオロメトキシアニオン発生試薬を開発し,さらに触媒化分解させる,芳香族フルオロホルミル基カップリング反応を発見した。本手法はビニル基へも適応できるこれまでに報告例のない,直接的フルオロホルミル基カップリング反応であり,Nature Researchが提供するオープンアクセス・ジャーナル「Communications Chemistry」のオンライン速報版での公開が決定した。その他にもフルオロホルムを用いた立体選択的トリフルオロメチル化反応にも成功するなど,当初の目的を超えた結果を得たことから,(1)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,先に得られたトリフルオロメトキシピリジン試薬を用いたトリフルオロメトキシ化反応について精査し,収率向上,汎用性の拡大を目指す。遷移金属触媒や,グライム類のようなポリエーテルを用い,トリフルオロメトキシアニオンを安定化させる方策を見つけ出すことで,安定なトリフルオロメトキシピリジン試薬としての有用性を確立する。直接的トリフルオロメトキシ化反応は,前述のハロゲン化アルキルとのSN2型反応に加え,芳香族カップリング反応,エポキシ開環反応,マイケル型付加反応などを考えている。さらに,研究計画に記載したペンタフルオロスルファニルアニオンを活用したペンタフルオロスルファニル化反応や触媒的カップリング反応の開発も取り組む。遷移金属やオニウム塩を利用した安定化を組み合わせて,顕在化してきた未解決課題に取り組む。
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