2018 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルグライコミクスによる細胞の包括的な糖鎖代謝ネットワーク解析
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18H02565
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
篠原 康郎 金城学院大学, 薬学部, 教授 (20374192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 潤一 北海道大学, 医学研究院, 特任准教授 (30374193)
吉岡 弘毅 金城学院大学, 薬学部, 助教 (30756606)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ケミカルグライコミクス / 糖鎖代謝 / 複合糖質 / 遊離オリゴ糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖の代謝の全体像と、それが環境依存的に変動する意義や仕組みがどうなっているのかについては不明な点が多く残されているため、本研究では、細胞の糖鎖代謝系の一部が撹乱されたときに,細胞全体の糖鎖発現 ネットワークはどの程度影響を受ける(あるいは受けない)のかをケミカルグライコミクスのアプローチにより明らかにする。糖鎖代謝の解明 に大きく寄与した糖鎖生合成や細胞内転送に作用する各種阻害剤を細胞に添加し、細胞全体の包括的なグライコームを解析し個々のサブグライコーム間のネットワークを明らかにする。 初年度である2018年度は、小胞体またはゴルジ体における糖鎖のプロセシングに影響することが知られている薬剤としてツニカマイシン、N-ブチル-1-デオキ シノジリマイシン、サプシガルジン、1-デオキシマンノジリマイシンを選定し、HeLa細胞またはHepG2細胞を用いてこれらの薬剤が糖鎖代謝に及ぼす影響を特にN-結合型糖鎖と遊離オリゴ糖を対象に解析を行った。いずれも研究例の多い薬剤であることから、論文に記載の条件を参考に薬剤の添加実験を行ったところ、全ての薬剤において既に報告されている特徴的な糖鎖の発現変動を検出することができた。さらに、個々の薬剤について、過去に報告がなくかつ予測困難な糖鎖の発現変動も複数検出することができた。例えば、ツニカマイシンの場合、N-結合型糖鎖、遊離オリゴ糖ともに総発現量が大きく低減したが、発現の変動の程度は糖鎖の構造に依存して異なること、発現量がむしろ有意に増大する糖鎖もあることがわかった。また、サプシガルジンと1-デオキシマンノジリマイシンに関しては、興味深い発現変動を与えた糖鎖の局在を調べるために、細胞分画を行い糖鎖の局在情報に関する情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初めの計画通りに概ね進捗しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の検討により明らかになった興味深い発現変動を示す糖鎖について、その構造をより詳細に解析する(結合様式など)。 昨年度解析対象としたN-結合型糖鎖や遊離オリゴ糖に加え、スフィンゴ糖脂質などの他の複合糖質糖鎖についても解析を進める。 興味深い発現変動を与えた糖鎖については、細胞分画を行い糖鎖の局在情報に関する情報を収集する。 小胞体やゴルジ体等における糖鎖のプロセシングに影響することが知られている薬剤としてさらにデオキシノジリマイシン、モネイシン等についても検討を開始する。 個々の発現変動を糖鎖の代謝経路に外挿し、各種薬剤が糖鎖代謝に与える影響の全体像を俯瞰する。
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