2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of osmo-physiology through analysis where and how osmotic circumstance functions in the body
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18H02569
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
名黒 功 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (80401222)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Osmo-physiology / 浸透圧 / ASK3 / NFAT5 / 脂質分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ASK3プロモーター下流で蛍光タンパクを発現するマウスの脳について透明化技術を応用して解析を行ったところ、蛍光の検出される構造的特徴からASK3が脳の脈絡叢に発現することを見出した。さらにASK3ノックアウトマウスでは脈絡叢におけるASK3の発現が消失していることも確かめられた。これまでASK3の主な発現部位は腎臓と考えられていたため、新たな発現部位の同定により、別の視点からASK3の生理的機能について解析を進めていくことが可能になった。この他にも脾臓、肺などいくつかの臓器で蛍光が観察されているため、臓器内のどのような細胞にASK3が発現しているか特定を進める。 NFAT5の核内移行を制御する遺伝子のゲノムワイドsiRNAスクリーニングで得られた分子が、高浸透圧ストレス時にNFAT5に制御される遺伝子発現に対して過剰発現で促進、ノックダウンで抑制することが確かめられ、スクリーニング結果が妥当なものであると確認できた。ただし、NFAT5の制御する複数の遺伝子発現のうち、この制御因子に影響されるものとされないものが見出され、依存性に多様性のあることが分かった。そのため、この違いを生み出す分子メカニズムを含めて、NFAT5と同定した制御因子の関係性を解析していく。さらに、スクリーニングを行ったHeLa細胞だけでなく、単球由来の細胞株であるTHP-1細胞においても同様にこの制御因子がNFAT5の転写活性を変化させることが明らかになったため、免疫細胞内においても同様のシステムが働いていることが考えられる。 新たに見出した高浸透圧ストレス依存的に細胞内で増加する脂質関連分子については、ミトコンドリアの機能との関連が確認できたため、高浸透圧ストレスとミトコンドリアの関連性に着目して解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に記載していた以下の(I)-(III)の全ての項目に関して、当初の計画どおりの研究を実施し、研究の進展に有用な情報が得られたため。 (I)浸透圧ストレス応答性キナーゼASK3の機能する場と役割の解析:ASK3プロモーター下流で蛍光タンパクを発現するマウスの臓器における蛍光シグナルの観察を進め、脈絡叢など新たにASK3の発現部位を同定できた。蛍光が観察された臓器については引き続き解析を進め、臓器内のどのような細胞にASK3が発現しているかの特定を進める。 (II)高浸透圧によるNFAT5制御の分子機構解析:実際にNFAT5の転写活性に影響する新規の遺伝子が得られたため、NFAT5の核内移行を制御する遺伝子のゲノムワイドsiRNAスクリーニングの結果が妥当なものであると確認できた。また、この遺伝子が注目していた免疫細胞でも働くことが確認できた。さらに、当初は予想していなかった点として、NFAT5の制御する複数の遺伝子発現のうち、この制御遺伝子に影響されるものとされないものが見出され、この違いを生み出す分子メカニズムも注目すべきポイントとして解析を進める。 (III)浸透圧ストレスで変化する脂質の解析:新たに見出した高浸透圧ストレス依存的に細胞内で増加する脂質関連分子について、その産生の原因がミトコンドリアの機能と関連することを示唆するデータが得られた。今後、高浸透圧ストレスとミトコンドリアの関連性に焦点を当てて当該脂質関連分子の役割を解析する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、当初から計画していた以下の(I)-(III)の3つの視点から浸透圧ストレス応答の分子基盤の解明を進める。 (I)浸透圧ストレス応答性キナーゼASK3の機能する場と役割の解析:これまでの研究でASK3が脳の脈絡叢に発現していることが明らかになったため、脈絡叢の主な役割として知られる脳脊髄液の産生とASK3の関連についてマウス個体および脈絡叢由来の培養細胞を用いて解析を行う。また、ASK3ノックアウトマウスで観察される急性臓器炎症に対する耐性のメカニズムにアプローチするため、特に免疫細胞を中心として急性炎症時の臓器内のASK3発現分布を検討する。 (II)高浸透圧によるNFAT5制御の分子機構解析:ゲノムワイドsiRNAスクリーニングにより同定したNFAT5の制御因子は、実際にNFAT5の転写活性に影響を与えることが確かめられたため、この制御分子とNFAT5の間の分子レベルの関係性についてクロマチン免疫沈降(ChIP)法などを用いて解明を進める。さらに、近年報告が相次いでいる浸透圧環境による免疫細胞の機能変化においてNFAT5が主要な役割を果たすことが明らかになりつつあるため、このような免疫細胞の機能変化において、見出した制御分子が関与するかについて解析を行う。 (III)浸透圧ストレスで変化する脂質の解析:これまでの研究により高浸透圧ストレス時に細胞内で著しく増加する脂質関連分子はミトコンドリアの機能と関連する結果を得ているため、この脂質関連分子の浸透圧依存的な増加の分子メカニズムと役割について解析を進める。特に、脂質、糖、アミノ酸代謝のバランスの変化の解析や、当該脂質関連分子の産生を薬剤により阻害した場合の細胞応答の変化について解析を行う。
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