2018 Fiscal Year Annual Research Report
一酸化窒素誘発性エピゲノム変化の病態生理的意義の解明と特異的阻害薬の薬効評価
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18H02579
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
上原 孝 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00261321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 靖雄 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00163387)
伊藤 昭博 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (40391859)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 一酸化窒素 / エピゲノム / 遺伝子発現 / 阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,2つのテーマを推進し,以下に示す結果を得ることに成功した. 1.NO依存的誘導遺伝子の特定とそのエピジェネティックな制御の有無を検討した.まず,マウス初代培養神経細胞ならびに株化ヒト胃がん細胞を用いて,NO 刺激に伴って発現が誘導される遺伝子をDNAマイクロアレイ解析ならびに次世代シークエンサーを用いたSAGE法で単離した.その結果,これまでに報告のないNO刺激依存的な遺伝子を特定することに成功した.これらについて,ゲノムにおけるCpGサイトの有無を確認すると同時に,私たちが開発したDNMT3ニトロシル化阻害薬であるDBICの効果について解析を進めている. 2.DBICの効果ならびにその誘導体の薬理学的特性を明らかにすることを目指した.まず,DNMTの誘導体を9種合成することに成功した.DNMT3のSーニトロシル化抑制能を細胞レベルで検討したところ,DBICよりも数十倍効力が高いものがあった.これらの結果はin silicoシミュレーションのそれと一致しており,さらに活性の高い誘導体の作出を進めることとした.次に,in vivoでの作用を検討するために最適化を計った.DBICは水にほとんど不溶であることから,動物への長期間投与が出来ない.そこで,DBIC塩酸塩の作出を試みたところ,0.8 mg/ml程度まで溶解することが判明した.なお,DBICと同様に大量合成も可能であることを確認した.一方,DBICはその一部が結晶中で代謝されることも,初期的に明らかにしている.将来的には,脳内での効果も期待していることから,プロドラッグ化を進めることにした.DBICの水酸基をサクシニル化した誘導体の合成に着手し,期待通りの化合物の作出に成功した.本化合物も水やbufferに約0.8 mg/ml (2 mM)まで溶解することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)NO依存的な遺伝子発現に関しては,候補を選定することを終えており,現在,再現性を確認している.これらについては,DBIC感受性に有無,CpGメチル化・脱メチル化を測定する予定であり,計画通りに進展している. 2)DBIC誘導体に関しては,当初計画していた誘導体の合成を順調に進めることができ,その薬理活性を測定も実施し,結果を得るに至っている. 3)さらに,将来の動物モデルへの適用を視野に入れ,化合物の水溶性向上を計画した.その中で,DBIC塩酸塩を合成し,飛躍的な溶解度の上昇を確認した.また,脳への移行を踏まえて,化合物のプロドラッグ化を計画し,サクシニル化体の合成を実施した.これも,水溶性であることを確認した. 上記のように,当初の計画は順調に進捗しており,それに加えて,新たな薬物設計の元に新規誘導体の作出と大量合成法を確立することが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降も計画に沿って研究を推進していく予定である.2018年度に水溶性DBICの合成に成功していることから,この誘導体を使用して動物実験を進める. 1)DBIC誘導体の活性と体内動態について.合成に成功した誘導体にはDBICよりもさらに効力の強いものが含まれていた.そこで,この薬理学特性をさらに解析していく.この際に,水溶性の向上には,前年度までの結果を参考に,塩酸塩化あるいはサクシニル化を進める.また,体内動態に関しては,血中や各臓器における移行をLC/MS/MSを用いて明らかにする予定である.これによって,DBICの代謝様式や組織移行の理解が進むと予想している. 2)上記の結果を踏まえて,パーキンソン病モデル動物におけるDBICの効果を検討する.代謝や組織移行性に問題がある場合は,脳室内投与で検討する. 3)胃がんモデルにおける検証も計画通り実施する.これに関しては,NOによる大腸腺腫細胞から腺癌への転換に対する各種DBIC誘導体の効果を検討し,DNMT3のSーニトロシル化阻害効果との因果関係を明らかにしていく. 4)NO依存的に誘導される遺伝子に関しては,引き続き,ゲノムCpGサイトの脱メチル化をバイサルファイトシークエンス法で検討する.NOがDNMT活性を抑制する結果,脱メチル化が促進し,特定遺伝子が誘導されることを証明する.
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[Journal Article] Attenuation of macrophage migration inhibitory factor-stimulated signaling via S-nitrosylation.2019
Author(s)
Nakahara, K., Fujikawa, K., Hiraoka, H., Miyazaki, I., Asanuma, M., Ito, A., Takasugi, N., and Uehara, T.
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Journal Title
Biol. Pharm. Bull.
Volume: 42
Pages: 1044-1047
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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