2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of peptides inhibiting tumor angiogenesis and metastasis to develop a novel anti-cancer drug
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18H02601
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金保 安則 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00214437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船越 祐司 筑波大学, 医学医療系, 助教 (30415286)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 抗癌剤 / 腫瘍血管新生 / 浸潤・転移 / ペプチド / 低分子量Gタンパク質 / Arf6 |
Outline of Annual Research Achievements |
低分子量G蛋白質Arf6は、腫瘍血管新生に基づく腫瘍増殖と癌細胞転移の両方において重要な役割を果たしており、Arf6阻害剤は効果的な抗癌剤となることが期待される。研究代表者らは、in vitroにおいてArf6に特異的に結合してその活性を阻害する創薬リードペプチドを創成している。本年度は、1)癌細胞転移に必要な浸潤および血管新生に対する本リードペプチドの影響の細胞レベルでの評価、および、2)リードペプチドとArf6の結合様式のNMRによる解析を計画し、以下の結果を得た。 1)を評価するためには、本ペプチドが血管内皮細胞と癌細胞の細胞膜を透過することが必要である。ペプチド末端へのポリアルギニン残基の付加によりペプチドの細胞膜透過性が亢進するので、本年度は、in vitroで最も効果的にArf6を阻害したリードペプチドに6個のアルギニン残基を付加したペプチドを作製した。血管新生と癌細胞の浸潤の評価系として、それぞれ、初代培養血管内皮細胞を用いたin vitroチューブ形成、および転移能の高いヒト乳癌細胞株MDA-MB231とマトリゲルを用いた浸潤アッセイの実験系を確立した。これらの評価系において、Arf6やその活性調節因子のノックアウトやノックダウン、および不活性型Arf6変異体で、肝増殖因子(HGF)と上皮増殖因子(EGF)刺激により誘起されるこれらの細胞現象が抑制されることを確認した。2)については、NMRでの解析に先立ち、精製したArf6とリードペプチドの結合モル比をゲル濾過クロマトグラフィーにより解析した。その結果、Arf6とリードペプチドは凝集体を作ることなく、1:1のモル比で結合することを確認した。これら精製蛋白質・ペプチドを用いてNMRによる解析を行った結果、リードペプチドによるArf6の複数のアミノ酸の化学シフトが観察され、おおよその結合領域を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、平成30年度中に上記に記載した細胞膜透過性ペプチドをテトラメチルローダミンにて蛍光ラベルし、初代培養血管内皮細胞、癌細胞への取り込みを評価するとともに、上記のin vitroにおける血管新生、癌細胞の浸潤の評価系へのペプチドの効果を検討することを計画していた。しかしながら、アルギニン残基を付加したペプチドの合成に想定を大幅に超える期間を要したために、平成30年度中にこれらの解析を完了することができなかった。ペプチド合成が遅れた理由は、目的とするペプチドの合成が困難であり、必要な合成量、純度を得るために、合成条件を最適化しながら再合成を繰り返す必要があったためである。ただし、平成30年度中にペプチドの合成を完了することができており、今後のペプチドへの蛍光ラベルの付加については、研究協力者の大阪府立大学大学院理学系研究科教授の藤井郁男が多くの実績を有しているので、問題なく進められると考えられる。また、細胞レベルでのArf6の機能阻害についても、上記に記載のとおり評価系を既に確立しており、ペプチドの蛍光ラベルが完了次第、解析を実施できる状態にある。従って、本年度の遅れは十分にリカバー可能な範囲であり、本研究課題の遂行には問題ないと考えられる。結合様式の解析については、同位体標識したArf6蛋白質を高純度・高濃度にて精製することに成功しており、NMRの解析に習熟した研究協力者の筑波大学准教授・川口敦史とともに、解析を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1)細胞膜透過性創薬リードペプチドの細胞内への取り込みと、2)血管新生と癌細胞浸潤への効果を細胞レベルで解析、3)Arf6と創薬リードペプチドの結合様式の解明とリードペプチドの最適化、4)創薬ペプチドの腫瘍血管新生と癌細胞転移への効果をin vivoで評価、に取り組む予定である。 1)については、上記のとおりリードペプチドを蛍光ラベルし、細胞内への取り込み効率を蛍光顕微鏡観察にて定量する。その結果とin vitroでのリードペプチドのArf6の阻害活性の結果をもとに、2)について、初代培養血管内皮細胞においてHGFによって誘起されるチューブ形成とEGFによって誘起されるMDA-MB231の浸潤が、リードペプチドにより阻害されるかを検証する。1)、2)については、平成31年(令和元年)度中に実施する。平行して、3)の結合様式の解析をNMRにて行い、Arf6とペプチドの結合領域を決定する。それをもとに創薬ペプチドの最適化を行う。最適化には、ペプチドとArf6の共結晶の解析、多次元NMR解析、分子動力学計算などから活性発現に重要な立体配座を決定する。これらの情報を基盤に、最適なペプチドモデルを構築し、最適化した創薬ペプチドを得る。リードペプチドの最適化は、平成32年(令和2年)度前半までの完了を目指す。4)のin vivoにおける解析は、マウスをモデルとして平成32年度後半に実施する。マウスの皮下にB16メラノーマ細胞あるいはLewis lung carcinoma細胞を移植するとともに、創薬ペプチドを投与し、腫瘍増殖と腫瘍血管新生が阻害されるかを検証する。癌細胞の転移については、ルシフェラーゼを安定発現したMDA-MB231を乳腺に移植、または静脈より投与するとともに、創薬ペプチドを投与し、肺への転移を観察することにより、創薬ペプチドの有効性を評価する。
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